ノーコードってそもそも何ができるの?
ノーコードを行うメリットやデメリットはある?
ノーコードとは、コードを書かずに開発を行う手法のことです。プログラミングの知識が無くてもWebアプリ開発やWebサイト制作ができるため、注目が集まっています。
そこで、この記事ではそもそもノーコードとは何なのか、その特徴をできることも交えわかりやすく解説します。ノーコードで開発するメリットやデメリット、おすすめのツールも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
この記事の監修者
フルスタックエンジニア
音楽大学卒業後、15年間中高一貫進学校の音楽教師として勤務。40才のときからIT、WEB系の企業に勤務。livedoor(スーパーバイザー)、楽天株式会社(ディレクター)、アスキーソリューションズ(PM)などを経験。50歳の時より、専門学校でWEB・デザイン系の学科長として勤務の傍ら、副業としてフリーランス活動を開始。 2016年、株式会社SAMURAIのインストラクターを始め、その後フリーランスコースを創設。現在までに100名以上の指導を行い、未経験から活躍できるエンジニアを輩出している。また、フリーランスのノウハウを伝えるセミナーにも多数、登壇している。
本記事の解説内容に関する補足事項
本記事はプログラミングやWebデザインなど、100種類以上の教材を制作・提供する「侍テラコヤ」、4万5,000名以上の累計指導実績を持つプログラミングスクール「侍エンジニア」、を運営する株式会社SAMURAIが制作しています。
また、当メディア「侍エンジニアブログ」を運営する株式会社SAMURAIは「DX認定取得事業者」に選定されており、プログラミングを中心としたITに関する正確な情報提供に努めております。
記事制作の詳しい流れは「SAMURAI ENGINEER Blogのコンテンツ制作フロー」をご確認ください。
ノーコードとは?
冒頭でもお伝えしたとおり、ノーコードとは「コードを書かずに開発を行う手法」のことです。プログラムを組まずにアプリを構築できる「ノーコードツール」を利用することで、ノーコード開発ができます。
まずは、以下の流れでノーコードの特徴を見ていきましょう。
人材不足の解決策としてノーコードに人気が集まっている
ノーコードに人気が集まっている理由は、IT人材不足が深刻になっているためです。
経済産業省が公開した「IT人材需給に関する調査」によると、2030年には最大で79万人のIT人材不足が予想されています。
また、レバテック株式会社が2022年12月に公開した調査結果によると、ITエンジニア(正社員)の求人倍率も15.8倍と高い状況です。
つまりIT人材不足が予想される中、ITエンジニアの採用も難しくなっているというわけです。上記の背景により、プログラミングをせずに開発が可能なノーコードに注目が集まっています。
なお、ITエンジニアの人材不足については経済産業省が公表する「DXレポート」も参考になります。さらに詳しく知りたい人は、ご確認ください。
ノーコードとローコードの違い
ノーコードと似ている言葉に「ローコード」があります。ノーコードとローコードの違いは、簡単に言うと「プログラミングをするかどうか」です。
ほかにも細かい違いがあるので、表にまとめました。
ノーコードの特徴 | ・プログラミングをせずに開発を行う ・ツールの使い方を学べば開発できる ・ツールの機能を超えた開発ができない |
ローコードの特徴 | ・少ないプログラムで開発を行う ・プログラミングの知識が必要となる ・機能の拡張ができるため自由度が高い |
ノーコードは専門性がなくても開発ができる分、ノーコードツールの機能を超えた開発ができません。仮に業務に合った機能がない場合は、運用をノーコードツールの機能に合わせて調整する必要があります。
一方でローコードは、プログラミングをして一部の機能を拡張・カスタマイズできます。プログラミングの知識は必要になるものの、自由度が高いです。
ITエンジニアがより速く効率的に開発を行う場合は「ローコード」、プログラミングを使わず開発を行う人材育成を考えている場合は「ノーコード」がおすすめです。
ノーコードでできること・できないこと
ここからは、ノーコードでできること・できないことをそれぞれ解説します。
ノーコードでできること
最初にお伝えしたとおり、ノーコードではプログラミングをせずにWebサイト制作やWebアプリ開発ができます。とはいえ「プログラミングをしない分、品質が低くなるのでは?」と気になる人もいるのではないでしょうか。
品質が気になる人は、実際にノーコードで作られた事例を見るのがおすすめです。
例えばWebサイト制作で言うと、ノーコードツール『STUDIO』の事例集が参考となります。「ノーコードだから質が低い」といったことはほとんどなく、現代的で素敵なデザインのサイトがいくつも紹介されています。
ほかにも、企業とインフルエンサーのマッチングサービス『Reachr』の例を見てみましょう。Reachrは『Bubble』で作られており、デザイン性が高いにもかかわらず短期間(約3ヵ月)で開発されました。
このようにノーコードでは、プログラミングを使わずに「Webサイト制作」や「Webアプリ開発」が可能です。
ノーコードでできないこと
ノーコードで何でも作れるかと言うと、そうではありません。以下のように、ノーコードではできないこと(もしくは難しいこと)もあります。
- 大規模なサービス開発
- 特定のニーズに応える機能の実装
- 自社業務に合わせたシステムの構築
- 安全性が高いセキュリティ機能の実現
- 複雑な条件/処理を反映したサービスの開発
- 特定のライブラリなどを併用した開発作業
特にアニメーションや動画などのリッチコンテンツを盛り込みたい場合は「特定のニーズに応える機能の実装」の難易度が高くなりやすいです。
例えば、ノーコードツール『Bubble』を使って社内向けのマニュアル管理ツールを作ったとします。画像だけでなく動画マニュアルも投稿できるようにしようと思っても、Starterプラン(一番グレードの低い有料プラン)ではストレージ容量が50GBしかなく現実的ではありません。
最上位のTeamプランであれば1TBの容量があるため動画にも対応できますが、月額費用も10倍となってしまうため利用のハードルは高くなってしまいます。このようにノーコードツールの機能制限により、できないこともあります。
なお、ノーコードでできないことについては下記の記事で詳しく解説しています。併せてご一読ください。
ノーコードで開発する3つのメリット
ここからは、ノーコードで開発するメリットを、3つにまとめて紹介します。
専門的な知識やスキルがない人でもサービスが開発できる
ノーコードで開発する最大のメリットは、専門的な知識やスキルがない人でもサービスを開発できる点です。通常Webアプリ開発やWebサイト制作を行う際は、以下のスキルが必要です。
- 何らかのプログラミング言語に関する知識・開発経験
- データベース操作言語「SQL」の書き方や実行方法
- チーム開発を行うために必要な技術に関する知識・経験
エンジニア経験が無い中で、上記のスキルを身につけるには時間がかかってしまいます。一方で、ノーコードであれば以下のスキルを身につけることで開発が可能です。
- ノーコードツールの基本的な使い方や操作方法
- ノーコードツールで効率的に開発するためのテンプレートの理解
やや癖のあるノーコードツールはあるものの、テンプレートもあるためプログラミングを1から学ぶよりは簡単です。このようにノーコードツールでは、専門的な知識やスキルが無くてもツールの使い方を覚えることで開発できます。
開発にかかる時間を抑えられる
ノーコードでは、開発にかかる時間も抑えられます。プログラミングで開発を行う場合、以下のように書いたコードが正常に動くかテストをしなければなりません。
- プログラム単位で正しく動くか確認する「単体テスト」
- 各機能が連携して動くか確認する「結合テスト」
- 要件どおりに動くか確認する「総合テスト」
テストでエラーが出た場合は、プログラムを見て原因を特定したうえで修正します。複雑な機能を扱っている場合、解決までに多くの時間が必要です。
そのため通常のアプリ開発では、プログラミングを行う期間と同じ、もしくはそれ以上にテストの時間がかかります。
一方ノーコードの場合は、既に作られた機能を組み合わせて開発します。そのため機能が上手く動かないようなケースは少なく、テストにかかる時間も最小限で済むのが特徴です。
短期間で開発できるため人的コストを抑えやすく、経費削減につながります。
外注費の削減にもつながる
これまでWebアプリ開発・Webサイト制作などを行う場合、自社でITエンジニアを抱えていない企業は、費用をかけて外部に開発依頼しなければなりませんでした。
しかしノーコード開発であれば、プログラミングの知識が不要なので社内で開発できます。そのため、外注費用の削減が可能です。
もちろんノーコードツールの使い方を学ぶ必要はありますが、外部のITエンジニアに依頼する場合と異なり業務知識の共有に時間がかかりません。
デジタルツールに長けた人材を育成することで、ツールを活用した業務改革を進めやすくなり、DX推進にもつながります。このように外注費を抑えられるのはもちろん、将来を見据えた人材育成が可能です。
ノーコードで開発する3つのデメリット
先ほどお伝えしたように、ノーコードで開発するメリットは多いです。とはいえ、デメリットがないわけではありません。
ここでは、ノーコードで開発するデメリットを3つ紹介します。
ノーコードツールの範囲内でしか開発できない
ノーコードツールには実装できる機能や拡張性に限界があり、その範囲内でしか開発できない点がデメリットです。特に大規模開発や複雑な仕様のアプリ開発にはあまり向いていません。
データ容量に制限があることで物理的に難しいシーンや、自社ならではの業務に合わせたオリジナルの機能開発ができないシーンなどがでてきます。ノーコードツールの制限に合わせて、利用方法を寄せていくことが必要です。
業務の進め方が変わってしまうため、業務効率の低下やミスにつながる可能性もあります。開発予定の機能をノーコードツールで作れるか、実際に運用する際にデータ容量の制限は問題ないかなど確認しておくことがおすすめです。
海外のツールが多く日本語の情報が少ない
ノーコードツールは、海外製のツールが多いです。実際に有名なノーコードツールである『Bubble』『Adalo』『Glide』は、海外で作られています。
そのため、他のツールと比べて日本語の情報が少ないこともデメリットです。
もちろん、ノーコードの使い方を学べるコミュニティもあるため「大きなデメリット」とまでは言い切れません。しかし、最新情報は海外サイトで公開されているため、英語力が必要となります。
また、何らかのトラブルがあれば英語で問い合わせする必要があります。特に、国内の代理店がない場合は要注意です。
英語に長けている従業員が少ない場合は、運用の難易度が上がってしまうので注意しましょう。
提供元の都合で開発できなくなる可能性がある
ノーコードツールは便利ですが、プラットフォームに依存した開発であることから「提供元の都合で開発できなくなる可能性」もあります。具体的に言うと、資金がショートしてサービス終了となり、開発プラットフォームの移転を余儀なくされるケースです。
サービス終了まで猶予期間はあるかもしれませんが、これまで作ってきたものを別のノーコードツールに移行するのは時間がかかります。また、ノーコードツールの使い方を新たに学ばねばなりません。
ノーコードツールを選ぶときは、以下のように実績があるか確認することをおすすめします。
- 公式サイトに導入事例は豊富にあるか
- SNSやノーコードコミュニティなどで活発に利用されているか
なお、次の記事ではノーコードツールでサービス開発するメリット・デメリットを詳しく解説しているので、よければ参考にしてください。
【目的別】ノーコード開発ができるツール
ここまでを読み、ノーコード開発に興味を持った人もいるのではないでしょうか。ここからは、次の目的別におすすめのノーコード開発ツールを紹介します。
業務効率化につながるノーコードツール
業務効率化につながるノーコードツールの例は、以下の3つです。
ツール名 | 特徴 |
Notion | ・業務に関する情報を1か所に集約して管理できる ・文章作成やタスク管理など、業務効率化につながるツールも作れる |
kintone | ・ドラッグ&ドロップだけでアプリが簡単に作れる ・ExcelやCSVを読み込んでアプリを作ることも可能 |
サスケWorks | ・作ったアプリ同士を連携して利用できる ・Webフォーム作成機能や一括メールの送信機能など便利な機能が豊富 |
例えばNotionを使えば、業務に関する情報を1か所に集約できます。ドキュメント作成や管理がしやすくなり、業務効率化には最適です。また、AIを活用した「文章の要約」や「アイデア出し」なども可能です。
業務効率化につながるノーコードツールの詳細は、下記の記事をご一読ください。
Webサイト制作が可能なノーコードツール
ノーコードツールを使えば、Webサイト制作も可能です。ツールの例を3つ紹介します。
ツール名 | 特徴 |
STUDIO | ・個人ブログや企業サイト、LPなどデザイン性の高いサイトが作れる ・日本語で使い方が学べるチュートリアルサイトもある |
BiNDup | ・Webサイト制作だけではなく、集客に関する機能もある ・400種類以上のテンプレートが完備されており、デザインをカスタマイズできる |
Webflow | ・アニメーションやスライダーなど、動きのあるデザイン性の高いサイトが作れる ・無料プランからスタイリッシュなデザインテンプレートが使える |
特にSTUDIOは、日本語で使い方を学べる点が魅力です。チュートリアルがYouTube(STUDIO Japan)に投稿されていますし、ヘルプページ(STUDIO公式ガイド)もあるため使い方に悩む心配もありません。
Webサイト制作が可能なノーコードツールの詳細は、下記の記事をご一読ください。
ゲーム開発ができるノーコードツール
ノーコードツールによっては、ゲーム開発も可能です。ツールの例を3つ紹介します。
ツール名 | 特徴 |
Unity ビジュアルスクリプティング | ・3D/2Dの幅広いジャンルのゲームを開発できるノーコードツール ・ドラッグ&ドロップで直感的にゲーム開発ができる |
RPG Maker Unite | ・RPGに特化したノーコードツール ・キャラクターやバトルシステムなども用意されているため作りやすい |
GDevelop | ・アクションやパズル・シューティングなど、幅広いジャンルの2Dゲームを開発できるノーコードツール ・日本語対応が進んでおり、ドキュメントや動画で使い方を学べる |
特にUnity ビジュアルスクリプティングは、3Dや2Dのゲーム開発ができます。プログラミングが可能なゲーム開発エンジン「Unity」もあり、使い方に慣れてきたタイミングで乗り換えることでよりオリジナル性の高いゲーム開発も可能です。
ゲーム開発が可能なノーコードツールの詳細は、下記の記事をご一読ください。
アプリ開発ができるノーコードツール
アプリ開発ができるノーコードツールもあります。ツールの例を3つ紹介します。
ツール名 | 特徴 |
Bubble | ・やや操作が複雑なもののさまざまなアプリ開発ができる ・公式のチュートリアルは英語のみのため、英語力が必要 |
Adalo | ・Webアプリやモバイルアプリが開発できる ・ドラッグ&ドロップで直感的に操作して開発ができる |
Glide | ・Googleスプレッドシートと連携させたアプリを開発できる ・お試しできるフリープランあり |
特にGlideを使えば、Googleスプレッドシートだけで簡単にアプリが作れます。アプリ開発はデータベースの扱いが難しいため、使い慣れているツールを使えるのは魅力的です。
アプリ開発が可能なノーコードツールの詳細は、下記の記事をご一読ください。
ノーコードに関してよくある質問
最後に、ノーコードに関してよくある質問にまとめて回答します。
- ノーコードで開発された事例はある?
- ノーコードの学習法は?
- 無料で使えるノーコードツールはある?
- AIが使えるノーコードツールはある?
ノーコードで開発された事例はある?
ノーコードで開発された事例は、いろいろあります。例えばX(旧:Twitter)に特化した人材のマッチングアプリ「kitene」は、ノーコードツール「Bubble」で作られています。
詳細は、事例をまとめた下記の記事をご一読ください。
ノーコードの学習法は?
独学やスクールの活用など、学習方法はいろいろあります。ツールによっては公式のチュートリアルが出ているため、まずはそこから挑戦してみてください。
学習方法について詳しく知りたい人は、下記の記事が参考となります。
無料で使えるノーコードツールはある?
無料で使えるノーコードツールもあります。「無料プラン」が用意されているケースや、無料トライアル期間が設けられているケースもあるので確認しておきましょう。
AIが使えるノーコードツールはある?
AIが使えるノーコードツールもあります。例えばNTTコミュニケーションズ株式会社の「Node-AI」では、ノーコードでAI開発が可能です。
他にも、代表的なノーコードツール『Bubble』でもAI開発ができます。詳細は、下記をご確認ください。
まとめ:ノーコードを使って開発をしてみよう
今回は、ノーコードの概要やメリット・デメリット、おすすめのノーコードツールなどを紹介しました。
ノーコードツールを社内で使うことにより、アプリ開発やWebサイト制作が可能な人材を育成できます。また、プログラミングをしないことからテストにかかる時間も少なく、短期間での開発も可能です。
IT人材不足の解決策にもつながり、社内のデジタル化も進めやすくなります。気になるツールがあれば、ぜひ実際にインストールして簡単なアプリを作ってみてください。