リスキリングとはどういう意味?
リスキリングををすることでどんなメリットがあるの?
テクノロジーの進歩によって近年のビジネスの形が大きく変わり、人材にスキルアップが必然的に求められる世の中に変化しています。
そういった変化に適応するために取り組む必要があるのが「リスキリング」です。
この記事ではリスキリングの詳細や、リスキリングに取り組むことのメリット・デメリットについて解説します。ぜひ、ご覧ください。
本記事の解説内容に関する補足事項
本記事はプログラミングやWebデザインなど、100種類以上の教材を制作・提供する「侍テラコヤ」、4万5,000名以上の累計指導実績を持つプログラミングスクール「侍エンジニア」、を運営する株式会社SAMURAIが制作しています。
また、当メディア「侍エンジニアブログ」を運営する株式会社SAMURAIは「DX認定取得事業者」に選定されており、プログラミングを中心としたITに関する正確な情報提供に努めております。
記事制作の詳しい流れは「SAMURAI ENGINEER Blogのコンテンツ制作フロー」をご確認ください。
リスキリングとは
リスキリングとは、働き方の変化によって今後新たに発生する業務で役立つスキルや習得を目的に勉強を行うことで、簡単に言えば、スキルの向上と新しく学び直すための取り組みです。
海外ではすでにリスキリングは浸透しつつありますが、日本では政府がリスキリングへの取り組みを呼びかけている最中です。
例えば、政府が経済産業がまとめた「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流」によると「近年では特にデジタル化と同時に生まれる新しい職業や、仕事の進め方が大幅に変わるであろう職業につくためのスキル習得を指すことが増えている」と記載あります。
そのため、今後はリスキリングによって能力やスキルを伸ばしていく人が増える傾向にあります。なお、リスキリングはプログラミングやデータ分析のスキルなど、学ぶ分野に関しては多岐にわたるため、あなたがスキルアップできそうなリスキリングを選択しましょう。
リスキリングが注目を集める3つの理由
ここからは、リスキリングが注目を集める理由を、3つにまとめて紹介します。
理由1:DX推進やデジタル化を国や企業が進めている
デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進及びデジタル化が進行する中で、組織の中の人間に求められるスキルも変化してます。
人工知能やクラウド技術の普及に伴い、ITスキルが今まで以上に重要視されています。
そのため、国や大企業では新しいテクノロジーへの対応力を高めるために社員のリスキリングを積極的に推進しています。
また、古いシステムから新しいシステムへの移行時や、新規事業開始時などにITスキルを持った社員が不足することも問題となっており、その背景からリスキリングが求められる世の中に変化しています。
積極的にリスキリングに取り組みましょう。
理由2:AIに代替えできる仕事が急増する傾向にあるから
人工知能(AI)の発展は、様々な職種の業務をAIに置き換える動きを促進しており、すでに製造業やコールセンターなどでは、すでにAIやロボットが一部の作業を担当しています。
知的作業も例外ではなく、データ分析や文章作成等にAIが活用され始めてるため、AIによる業務代替が進む中、新たなスキルを習得するリスキリングの重要性が増しています。
これによりAIに仕事を奪われる可能性のある職種の人々でも、リスキリングにより新たなスキルを獲得し、自身の市場価値を高めることが可能になります。
そのため、リスキリングに取り組まない手はありません。
理由3:ビジネスの変革・産業構造の変化
グローバル化やデジタル化の進展が、ビジネスモデルや産業構造を変えています。
例えば、Eコマースなどのいつでもネットで買い物ができるネットショップの普及が、物流や小売業界に影響を与えているのです。
こうした変化に対応するためには、従業員自身が新たなスキルを学び、役割を再定義することが求められており、リスキリングは、こうした新たな能力を身につけるための手段として、今後は浸透していく傾向にあります。
また、従業員がリスキリングを通じて変化に対応することで、企業全体の競争力を維持・向上させることが可能になるため、リスキリングが取り組める環境にいる場合は、自発的に取り組んでみましょう。
リスキリングに取り組む3つのメリット
ここからは、リスキリングに取り組むメリットを、3つにまとめて紹介します。
- メリット1:生産性が向上する
- メリット2:業務の効率化ができる
- メリット3:社員のモチベーションが向上する
メリット1:生産性が向上する
リスキリングにより、新たなスキルや知識を獲得することで、一定時間内に達成できる仕事の量や質が向上します。
例えば、リスキリングで得た最新のAI技術などを学んだ場合、手作業で行っていた物を自動化して大幅に作業時間を短縮することが可能です。
また、同じ時間とリソースを用いて、以前よりも多くの出力(商品やサービス)を生み出す能力が発揮されるため、リスキリングに取り組むことで生産性がアップすることが可能です。
メリット2:業務の効率化ができる
リスキリングによって社員が新たなスキルを習得すると、同じタスクをより早く、少ない労力で仕事に取り組むことが可能です。
例えば、リスキリングでAIの仕組みを理解した場合、今まで手入力で行っていたデータ入力の作業などを自動化できたり、労力を減らしつつ効率をアップできる方法を選択できます。
また、下記の画像はリスキリングに取り組む理由を集計したデータですが、76%が「業務効率化のため」と答えているため、ほとんどの人が業務効率を上げるのを見込んで取り組んでいることがわかります。
全体的な業務の働き方を見直して生産性を高めることもできるため、リスキリングに取り組んだメリットを存分に実感できるでしょう。
メリット3:社員のモチベーションが向上する
リスキリングに取り組むことで、仕事に対してモチベーションが向上します。
なぜなら、リスキリングに取り組むことで社内の目標達成につながり、評価が上がるからです。評価があがればボーナスなどに響く可能性もありますし、スキルが身につけば市場価値も上がります。
最初は面倒で取り組んでいたリスキリングも、継続して取り組んでいるとスキルが上がり、市場価値の高い人材になっていることを実感します。
また、モチベーションが上も上がっていくのを実感できるため、継続してリスキリングに取り組めば才能を生かす場が増え、どの職場でも必要不可欠な存在になれます。
リスキリングに取り組む3つのデメリット
メリットに続き、ここからはリスキリングに取り組むデメリットを、3つにまとめて紹介します。
- デメリット1:費用が発生する
- デメリット2:長期間取り組まないといけない
- デメリット3:スキルを身につけた社員が異動する可能性がある
デメリット1:費用が発生する
リスキリングに取り組むには費用が発生します。新たなスキルを身につけるためには専門性が高い物が多いため、費用が発生し有料で受講する必要があります。
下記の画像では、82%がリスキリングに払える金額は5万円未満という結果が出ています。
5万円払ってリスキリングを受ける判断を即決できる人は少ないと思われるため、費用を払っても「受けたい!」と思えるような内容にする必要があります。
デメリット2:長期間取り組まないといけない
リスキリングは長期間取り組む必要があり、会社の業務後にリスキリングに取り組むことを考えるとモチベーションの維持が難しいです。
また、リスキリングは継続して学習するハードルの高さだけではなく、下記のコストや手間も発生します。
- 取得するべきスキル・従業員の選定
- 資格取得・研修時間・書籍購入などの補助
- 従業員がリスキリングを継続したいと思える体制作り
長期間取り組むための事前準備を念入りに行い、リスキリングを成功させましょう。
デメリット3:スキルを身につけた社員が異動する可能性がある
リスキリングに取り組んだ社員は、スキルをつけて以前より優秀な人材として活躍します。
そのため、必ずしもデメリットとは言えませんが、スキルを身につけた社員が別の部署に異動する可能性はゼロではありません。
下記の画像では「リスキリングに取り組む理由」をアンケート調査した画像ですが、将来の企業・副業・転職等のため、と答えた人は40%を超えます。
社員が異動や転職する可能性も考慮して、リスキリングを導入するか検討しましょう。
リスキリングに取り組む5つの手順
なかには、どうリスキリングを進めていけばいいのか、イメージが湧かない人もいますよね。
そこで、ここからはリスキリングに取り組む際の手順を、5つのステップにまとめて紹介します。
- ステップ1:仕事や評価に役立つスキルを整理する
- ステップ2:学習方法を検討する
- ステップ3:会社で使える予算を確認する
- ステップ4:会社の目標設定に組み込む
- ステップ5:スキルを身につけて会社に報告する
ステップ1:仕事や評価に役立つスキルを整理する
まずは、仕事や評価に役立つスキルを整理しましょう。自分が取得していないスキルを考えて、今後の仕事や評価に役立つスキルを洗い出すのがおすすめです。
また、保有していないスキルの可視化を行うことで、自分に必要なスキルを一覧化できるデータベースやスキルマップを作成できます。
作成後はいつでも必要なスキルを確認できるため、リスキリングに取り組む際のデータとして活用できます。
今後はAIやITが発展していく傾向があるため、以下のスキルをリスキリングに取り入れてみてはいかがでしょうか。
- データ分析
- マーケティングスキル
- コミュニケーションスキル
- プログラミングやIT関係のスキル
上記のスキルは仕事で役立つため、検討してみてください。
ステップ2:学習方法を検討する
リスキリングを学習する際に、多くの学習方法から選択する必要があります。選択肢を1つに絞ってしまうと、リスキリングを実施した時に「この方法だと学習しづらいな……」と思う可能性も否定できません。
そのため、リスキリングを取り入れるときは多くの学習方法を準備しましょう。なお、リスキリングは以下の学習方法から選択するのがおすすめです。
- 研修形式
- 社会人大学
- eラーニング
- オンライン講座
自社で用意するのが難しい場合は、外部に依頼するなどの方法を選択するのも良いでしょう。
また、学習方法を多く展開しておくことで、リスキリングを学ぶ側は自分に合った学習方法を選択できます。
ステップ3:会社で使える予算を確認する
社内で使える予算を確認してリスキリングを導入しましょう。
理由は、予算を会社内で検討することで、社員がスキルアップできるためのリスキリングを完成させるために、何が必要で何が不必要か把握できるからです。
下記の画像に載っているデータが、リスキリング1人あたりの年間予算です。ぜひ、参考にしてください。
上記のデータを確認すると、リスキリングで当てられる1人あたりの年間予算は1万円が最も多い結果になっています。
年間予算のデータをもとに、会社内で当てられるリスキリングの予算を検討していきましょう。
ステップ4:会社の目標設定に組み込む
リスキリングを社内に浸透させる方法として、会社の目標設定に組み込むのがおすすめです。
目標設定にすることで社員はリスキリングに取り組む必要があるため、社員のスキルアップを自然に促すことが可能です。
目標達成がされた時にはリスキリングの実施が完了している状態のため、スキルが身に付いて、社内でも対応可能な業務が増えて評価アップに繋がります。
ステップ5:スキルを身につけて会社に報告する
最終ステップは、リスキリングで身につけたスキルを会社に報告することです。
報告することでリスキリングを導入した成功事例になり、リスキリングを取り組むために段取りした部署はやりがいを感じます。
また、リスキリングを取り入れた社員が飛躍的に活躍している場合は、評価も見直して昇進や昇給なども検討すると社員のモチベーションも上がるため、評価制度も同時に見直すのも良いでしょう。
リスキリングを導入した企業5選
ここからは、リスキリングを導入した企業を5社紹介します。
- 事例1:富士通株式会社
- 事例2:株式会社三菱UFJ銀行
- 事例3:株式会社メルカリ
- 事例4:ヤフー株式会社
- 事例5:サッポロビール株式会社
事例1:富士通株式会社
2019年に富士通は「IT企業からDX企業へ」というメッセージを社内に発信し、独自に開発した「Global Strategic Partner Academy」と呼ばれる教育プログラムを展開しています。
「Global Strategic Partner Academy」はオンライン上で受けることが可能で、専門性の高い知識やノウハウを学ぶことが可能です。
また、12万人ほどの社員に対して5年間で5,000億〜6,000億の投資をリスキリングに行い、内部強化を図る予定も立てています。
事例2:株式会社三菱UFJ銀行
株式会社三菱UFJ銀行もリスキリングを導入して積極的に取り組んでおり、変革・挑戦できる社員を育成して、経営の好循環を構築するためにリスキリングが実施されています。
また、株式会社三菱UFJ銀行は以下の4つを重要テーマに掲げ、リスキリングに取り組んでいます。
- プロ人材育成・リスキル
- エンゲージメント向上
- DEIの推進
- 健康経営
社会・お客様に貢献するグローバル金融グループとして、株式会社三菱UFJ銀行は進化を続けています。
事例3:株式会社メルカリ
株式会社メルカリは「Mercari Restart Program」という独自のリスキリングを2021年に導入しています。
様々な事情でキャリアを離れてしまった人を対象に、3ヶ月程度のインターンシップを提供して職場への復帰を支援する物になっています。
「また職場に復帰したい……」と考えている人には嬉しいプログラムで、同時にリスキリングとしてスキルを身につけることも可能です。
事例4:ヤフー株式会社
ヤフー株式会社は、プログラミング未経験者からエンジニアへのリスキリングを支援する「Yahoo!テックアカデミー」を2022年から開始しています。
最初は100名限定で行っていたリスキリングですが、想像以上の応募があったため、定員数の枠を増やして実施しています。
ヤフー株式会社のリスキリングは、就職・転職・副業、多くの理由で応募が殺到しました。
事例5:サッポロビール株式会社
サッポロビール株式会社は2022年にリスキリングに力を入れており、独自のDX・IT人材育成プログラムをスタートしており、従業員の残業時間を減らすことに成功しています。
サッポロビール株式会社のDX推進構造は、以下の3つで成り立っています。
- お客様接点を拡大
- 既存・新規ビジネスを拡大
- 働き方の変革
上記の3つを実現していくため、日々サッポロビール株式会社はリスキリングの強化に取り組んでいます。
リスキリングにはITスキルがおすすめ
リスキリングでおすすめのスキルは、プログラミングなどのITスキルです。
理由は、日々テクノロジーの進化が進んでいる現代社会では、プログラミングなどのITスキルを取得している人の需要がとても高く、今後も市場価値は高まる傾向にあるからです。
なお、おすすめのITスキルは次のとおりです。
- 問題解決能力
- 論理的思考力
- 情報収集スキル
- プログラミングスキル
- 資料・書類作成スキル
- コミュニケーションスキル
上記のスキルについては、以下の記事で紹介しているため、参考にしてください。
→ ITエンジニアに必要な6つのスキル!身につけるコツも紹介
まとめ
今回はリスキリングについて徹底解説しました。
リスキリングを取り入れると、生産性の向上や業務効率の改善が見込めます。今回紹介した内容をもとに、リスキリングを検討するのはいかがでしょうか。
この記事の監修者
フルスタックエンジニア
音楽大学卒業後、15年間中高一貫進学校の音楽教師として勤務。40才のときからIT、WEB系の企業に勤務。livedoor(スーパーバイザー)、楽天株式会社(ディレクター)、アスキーソリューションズ(PM)などを経験。50歳の時より、専門学校でWEB・デザイン系の学科長として勤務の傍ら、副業としてフリーランス活動を開始。 2016年、株式会社SAMURAIのインストラクターを始め、その後フリーランスコースを創設。現在までに100名以上の指導を行い、未経験から活躍できるエンジニアを輩出している。また、フリーランスのノウハウを伝えるセミナーにも多数、登壇している。