AWSの料金体系が丸わかり!基礎知識や確認方法、節約術を紹介

AWSの料金体系はどうなっているの?
AWSの料金を抑えるポイントは?

人気のクラウドサービス「AWS(Amazon Web Services)」に興味を持つ人も増えています。しかし、AWSを利用する上で、料金の話は避けて通れません。AWSの料金体系がわからず、使うのが不安な人もいますよね。

料金体系を把握せずにAWSを利用すると、思わぬ料金を請求されてしまうケースも。そうならないように、本記事を読んでAWSの料金体系について押さえておきましょう。

AWS未経験者でもわかりやすい内容なので、ぜひご一読ください。「そもそもAWSについて詳しく知らない」という人には、次の解説動画もおすすめです。

目次

AWSの料金に関する基礎知識

AWSの料金シミュレーション例
AWSの料金に関する基礎知識

まずは、AWSの料金に関する基本事項を順番に解説していきます。

料金体系は「従量課金制」が基本

AWSには200を超えるサービスが存在しますが、いずれも料金体系は「従量課金制」となっています。従量課金制とは、実際にサービスを利用した分だけ料金が発生する方式のことです。

定額料金ではなく、毎月の利用状況によって請求額は変動します。利用しないサービスのために料金が発生することはないため、無駄な料金を抑えやすいのがメリットです。

反対に、サービスを利用状態のまま放置すると、思わぬ請求が届くこともあります。AWSを利用するときには、サービスの利用状況をしっかり把握することが大切です。

決済方法はクレジットカードが基本

AWSの決済方法は、クレジットカード(またはデビットカード)が基本です。AWSアカウントの作成時にはカード情報の登録を求められますが、決済はこのカードで行われます。

当然ながら、有効期限を過ぎたカードは決済には使えません。そのため、カードの有効期限が切れる前に、新しいカードの情報に更新する必要があります。

なお別のカード情報を追加し、請求先を変更することも可能です。詳しい手順は、AWS公式サイトを参照してください。

日本円での支払いも可能

決済に用いる通貨単位は、デフォルトで「USD(USドル)」となっています。しかし、請求情報がUSドルで記載されていては、利用料金が把握しづらいと感じる人も多いですよね。

もちろん、日本円での支払いに変更することも可能です。AWSの管理者画面(AWSマネジメントコンソール)にログインし、AWSアカウントのカード情報を編集する画面から設定を変更できます。

詳細な手順は、AWS公式サイトを参考にしてください。

請求書払いが可能な場合も

「過去3ヵ月のAWS利用料金が月額平均2,000ドル以上」であれば、請求書払いへの変更も可能です。クレジットカードの利用に制限がある企業などの場合は、請求書払いを利用する手もあります。

ただし、紙の請求書が送付されるわけではなく、PDFでの電子送付となります。海外の銀行口座にUSドルで振り込む形となり、手数料も自己負担のため注意しましょう。

なお、AWSとの提携企業が提供する「請求代行サービス」を利用すれば、日本円での請求書払いも可能です。請求代行サービスを利用する場合は、Googleで「AWS請求代行サービス」と検索してください。

支払方法の変更手順については、AWS公式サイトで詳しく紹介されています。

サービスごとに料金設定は異なる

いずれのAWSサービスも従量課金制ですが、料金設定は異なります。AWSサービスごとに課金要素が決められており、それらをもとにAWS料金が算出されます。主な課金要素は、次の3つです。

  • コンピューティング
  • ストレージ
  • データ転送

それぞれについて、詳しく解説します。「どんなAWSサービスがあるか知りたい」という人には、次の記事がおすすめです。

AWSのサービス一覧表を紹介!使い方や学習法も【2024年最新】
更新日:2024年3月8日

コンピューティング

「コンピューティング」とは、コンピューターによりデータ処理することです。たとえばAI(人工知能)を用いたデータ分析など、あらゆるデジタル技術にはコンピューティングが欠かせません。

AWSでのコンピューティングには、AWSが提供するサーバー(データ処理・管理用のコンピューター)を用います。AWSサービスで必要となるサーバーの性能や台数によって、AWSの利用料金も変わります。

ストレージ

「ストレージ」とは、データを格納する領域のことです。データの保存・管理をともなうAWSサービスの場合には、利用するストレージのデータ容量が大きいほど料金も増大します。

データ転送

AWSと外部サービスを連携させる場合などには、必ずデータ転送をともないます。外部からAWSへのデータ転送は無料ですが、AWSから外部へのデータ転送は有料です。

当然ながら、データ転送量が多いほど料金も増大します。複数のAWSサービスを利用する場合、明細書にはトータルのデータ転送料金が記載されます。

なお2022年3月29日現在では、AWSサービスのデータ転送は合計100GBまでは毎月無料です。

「無料利用枠」を利用できるサービスも

AWSサービスによっては「無料利用枠」が設けられており、決められた範囲内であれば無料で利用できます。無料利用枠は下表の3種類があり、AWSサービスによって適用できる枠が異なります。

無料利用枠概要
無料トライアルサービスごとに決められた回数や期間、データ量だけ無料で利用できる
12ヵ月間無料サインアップ(アカウント作成)した日から数えて1年間無料で利用できる
無期限無料(常に無料)利用期間の制限がなく半永久的に無料で利用できる

AWS無料利用枠の種類

注意しておきたいのは、無料利用枠=完全無料ではない点です。たとえば、「12ヵ月間無料」の適用期間中でも、当月の利用枠範囲(回数やデータ量)を超えた分は料金が発生します。

また、AWSサービスの仕様は変わるケースも少なくありません。そのため、どの無料利用枠を適用できるかは事前に必ず確認しましょう。無料利用枠について詳しくは、次の記事をお読みください。

無料枠で始めるAWS完全ガイド!必要な知識をわかりやすく解説
更新日:2024年3月8日

AWSの料金計算シミュレーション(Webサーバー構築・運用)

AWSの料金体系がわかっても、具体的にイメージするのは難しいですよね。ここではイメージしやすいように、「Webサーバーの構築・運用」を例として料金計算をシミュレーションします。

Webサイトの運用には、データを管理するWebサーバーが欠かせません。今回は、仮想的なWebサーバーを構築・運用できるAWSサービス「Amazon EC2」を用いるものとします。

先ほど紹介した下記3つの課金要素ごとに、料金を計算していきましょう。

  • コンピューティング
  • ストレージ
  • データ転送

なお、利用するサービスや条件によって料金は変わるため、あくまで参考としてご覧ください。

コンピューティングの料金

Amazon EC2で構築できる仮想的なWebサーバーは、「インスタンス」と呼ばれます。インスタンスには400以上の種類(インスタンスタイプ)があり、コンピューティング性能や料金が変わります。

今回は、2つのCPU・2GBのメモリを持つインスタンス「t3.small」を選択したと仮定して料金計算しましょう。

【シミュレーション条件】

  • 無料利用枠(12ヵ月間無料)は適用しない
  • 1時間あたりコンピューティング料金:0.0208 USドル(t3.smallインスタンス)
  • 稼働させるインスタンス数:1台
  • 月80時間使用(平日2時間・土日5時間)
  • 運用期間:1ヵ月
  • 1 USドルあたり123.66 円(2022年3月29日時点)

このとき、コンピューティングにかかるAWS料金は次のように計算されます。

USドル0.0208(USドル) × 1(台) × 80(時間) × 1(ヵ月) = 1.664 USドル
日本円1.664(USドル) × 123.66(円) ≒ 206円/月

つまり、上記の条件だとコンピューティングには、1ヵ月あたり約206円かかることになります。

ストレージの料金

Amazon EC2で構築したインスタンスを終了すると、インスタンス内のデータは削除されてしまいます。そのため、インスタンスのデータを格納するためにストレージの利用も必要です。

Amazon EC2で使えるストレージにはいくつかの種類があり、それぞれ速度性能などが異なります。ただし今回のt3.smallインスタンスで使えるストレージは、「Amazon EBS(Elastic Block Store)」のみです。

また、インスタンスが利用するストレージのデータ容量は、GB単位で指定できます。当然ながら、データ容量が大きいほど料金も増大します。

【シミュレーション条件】

  • 1GBあたりのストレージ料金:0.08 USドル(汎用SSD:gp3を適用)
  • 利用するデータ容量:8 GB
  • 運用期間:1ヵ月
  • 1 USドルあたり123.66 円(2022年3月29日時点)

このとき、ストレージにかかるAWS料金は次のように計算されます。

USドル0.08(USドル) × 8(GB) = 0.64 USドル
日本円0.64(USドル) × 123.66(円) ≒ 79円/月

つまり、上記の条件だとストレージには1ヵ月あたり約79円かかることになります。

データ転送の料金

Webサイトにユーザーがアクセスするとき、Webサーバーからユーザーのパソコンへと、Webページのデータ転送をともないます。前述のとおりAWSから外部へのデータ転送は有料のため、この場合も料金が発生します。

データ転送の計算でポイントとなる要素は、「Webページ1件あたりのデータサイズ」と「Webサイトへのアクセス数」です。また、毎月無料で使えるデータ転送分も加味する必要があります。

【シミュレーション条件】

  •  Webページ1件あたりのデータサイズ:2 MB
  • 1ヵ月あたりのアクセス数:100,000 PV
  • 毎月無料のデータ転送サイズ:100 GB(データ転送するのはAmazon EC2だけ)
  • 1GBあたりのデータ転送料金:0.02 USドル(地域は東京)
  • 運用期間:1ヵ月
  • 1 USドルあたり123.66 円(2022年3月29日時点)

まず、1ヵ月あたりの合計データ転送サイズを計算します。

  • 2(MB) × 100,000(PV) = 200,000 MB ≒ 195 GB

今回はAmazon EC2でしかデータ転送を行わない前提のため、毎月無料で使える100 GBを差し引きます。

  • 195(GB) - 100(GB) = 95 GB

1GBあたりのデータ転送料金をこれに掛けると、次のようになります。

  • 0.02(USドル) × 95(GB) = 1.9 USドル

日本円に換算すれば、下記のとおりです。

  • 1.9(USドル) × 123.66(円) ≒ 235円/月

つまり、上記の条件だとデータ転送には1ヵ月あたり約235円かかることになります。コンピューティング・ストレージ・データ転送を合計すれば、1ヵ月あたり約520円です。

AWSの料金計算ツールとは?

これまでのシミュレーションを見てもわかるとおり、AWSの料金計算は複雑です。そのため料金計算を楽にしたい場合には、「料金計算ツール」の利用をおすすめします。

料金計算ツールとは、ストレージやデータ転送などの要素を入力すると、おおよその利用料金を計算してくれるツールです。ここでは、2つの料金計算ツールを紹介します。

AWS Pricing Calculator

「AWS Pricing Calculator」は、AWSが提供している無料の料金計算ツールです。公式ツールのため信頼性が高く、あらゆるAWSサービスに対して、細かい条件設定も含めて利用料金を計算できます。

複数のAWSサービスを利用する場合でも、グループ機能を用いて合計の見積もりを算出することが可能です。AWSアカウントなしで使えるため、気軽に利用してみると良いでしょう。

ざっくりAWS

出典:ざっくりAWS

「ざっくりAWS」は、公式のAWS Pricing Calculatorをよりシンプルにした無料の料金計算ツールです。AWSサービスの主要な機能の利用料金を、少ない操作でシミュレーションできます

各入力項目についての補足説明もあるため、AWSに詳しくない人でも気軽に利用可能です。ただし、対応していないAWSサービスの料金を見積もりたい場合は、AWS Pricing Calculatorを利用しましょう。

AWSの料金を確認する方法

先ほどもお伝えしたとおり、紙のAWS請求書が手元に届くことは基本的にありません。その代わりに、使っているAWSアカウントの「請求情報とコスト管理」という画面で、AWSの利用料金を月別で確認できます。

毎月の請求額は、月初めに確定します。確定したAWSの請求内容は、PDFでダウンロードすることも可能です。当月の利用料金は日々更新されるため、こまめに確認しましょう。

AWS料金の詳細な確認手順については、AWS公式サイトをご覧ください。

AWSの料金を抑えるための3ポイント

料金を抑えるためのポイント

これからAWSサービスを使うなら、無駄な料金をかけたくありませんよね。AWSの料金を抑えるためのポイントは、次の3つです。

  • 不要なリソースを停止する
  • 「請求アラート機能」で使い過ぎを防ぐ
  • 「リザーブドインスタンス」を活用する

1つずつ、順番に解説します。

ポイント1:不要なリソースを停止する

気づかぬうちに料金が発生しないよう、不要なリソースは停止しましょう。

たとえばAmazon EC2のインスタンスが利用状態になっていると、実際には利用していなくても料金が発生します。利用しないインスタンスがあれば、速やかに停止することで余計な料金を請求されずに済みます。

Amazon EC2に限らず、こまめにAWSの利用状況をチェックして、利用状態のリソースを把握することが大切です。

ポイント2:「請求アラート機能」で使い過ぎを防ぐ

予算を超えた利用を防ぐためには、「請求アラート機能」を活用するのが効果的です。請求アラート機能とは、AWSの利用料金が設定金額に達したときにメールで知らせてくれる機能のこと。

請求アラート機能を使うために必要な作業は、大まかに次の2つです。

  • 1. 請求アラート機能の有効化
  • 2. 「Amazon CloudWatch」での請求アラーム作成

まずは、「請求情報とコスト管理」画面で「請求アラートを受け取る」チェックボックスを有効にしてください。ただし、一度有効にすると無効にできないため注意が必要です。

請求アラート機能を有効化したら、「Amazon CloudWatch」というAWSサービスで請求アラームを作成します。この請求アラームに設定した金額(しきい値)を超えたときに、メールで通知されます。

ただし請求アラームのしきい値は、「予算の上限設定」では意味がないため注意しましょう。たとえば、しきい値に予算額「100万円」を設定しても、メール通知は100万円に到達したタイミング。これでは後の祭りです。

請求アラート機能の詳しい設定手順については、AWS公式サイトを参照してください。

ポイント3:「リザーブドインスタンス」を活用する

Amazon EC2などのインスタンスをまとまった期間利用する場合は、「リザーブドインスタンス」の活用がお得です。リザーブドインスタンスとは、一定期間の利用を約束する代わりに割引を受けられるインスタンスのこと。

Amazon EC2の場合、利用した量に応じて課金される通常のインスタンスと比べて、最大72%もの割引が適用できます。(2022年3月29日現在)

ただし利用しない時間が多いと、かえって割高になることも考えられます。リザーブドインスタンスの利用を考えるときには、前述の料金計算ツールも使って、どちらがお得かシミュレーションすると良いでしょう。

AWSの勉強方法

これからAWSスキルを身につけたい人には、下記5つの勉強方法がおすすめです。

  • 学習本を読む
  • 学習サイトで勉強する
  • AWS公式のトレーニングサイトを利用する
  • 勉強会に参加する
  • AWS認定資格の取得を目指して勉強する

最初にAWSの基礎知識を身につけるときには、学習本や学習サイトが適しています。学習本だと1冊で体系的に学べますし、学習サイトだと動画やスライドでサクサク学べます。

基礎固めができたら、AWS公式のトレーニングサイトを利用してAWSを実践しましょう。動画やスライドによる「デジタルトレーニング」は、AWSアカウントさえあれば無料で利用可能です。

独学が不安な場合は、勉強会に参加する手もあります。「TECH PLAY」などの勉強会検索サイトでAWSの勉強会を探すと良いでしょう。

AWSを仕事に活かしたい人には、「AWS認定資格」の取得を目指して勉強するのもおすすめです。取得できれば転職での大きなアピールポイントになりますし、目指す過程で体系的に知識が身につきます。

AWSの勉強方法を詳しく知りたい人は、次の記事をご一読ください。

AWSの勉強法が丸わかり!初心者向けに8つの方法を詳しく解説
更新日:2024年3月1日

AWS認定資格が気になった人には、次の記事が参考になります。

AWS認定資格とは?概要や取得するメリットをわかりやすく解説
更新日:2024年3月1日

AWSスキルを身につけるなら「転職保証コース」がおすすめ

AWSエンジニアになるなら、AWSの知識はもちろん、実践的なスキルも必須です。しかし、AWSはエンジニア経験者でもすぐには使いこなせません。初心者だと、多くの人が実践学習で挫折してしまいます。

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まとめ:料金体系を把握してAWSを快適に使おう

今回はAWSの料金を中心に、次の6点についてお伝えしました。

  • 料金に関する基礎知識
  • 料金計算シミュレーション
  • 料金計算ツールとは?
  • 料金を確認する方法
  • 料金を抑えるための3ポイント
  • 勉強方法

AWSを仕事で使うにしても勉強するにしても、料金を完全に無視することはできません。AWSを快適に使うためには、料金体系をしっかり把握することが大切です。

この記事の内容を参考にして、ぜひAWSを実践してみてください。

この記事を書いた人

侍エンジニアは「人生を変えるプログラミング学習」をコンセンプトに、過去多くのフリーランスエンジニアを輩出したプログラミングスクールです。プログラミングに役立つ情報や有用な情報を発信していきます。
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