フリーランスエンジニアの手取りは?税金計算方法・年収シミュレーション

フリーランスエンジニアの手取りはいくら?会社員より安くなるってホント?
フリーランスエンジニアが手取りをアップさせる方法を知りたい!

フリーランスエンジニアの手取りはいくらになるのか、目安を知りたい方は多いはずです。

フリーランスエンジニアになると、「会社員時代よりもかなり年収が増えた」という話も多いのです。

ただし、年収が増えたからといって必ず手取り額が増えるわけではありません。「年収が増えても、よくよく計算してみると実際の手取りは減っていた」というケースもあるのです。

この記事では、フリーランスエンジニアの手取りを計算する方法や、年齢・家族構成・申告区分などのパターン別でシミュレーションをご紹介します。同年齢・同収入の会社員とフリーランスエンジニアとで手取りがどう異なるのかも、比較してみましょう。

目次

フリーランスエンジニアの手取りを計算する方法

手取りを計算する方法

まずは、フリーランスエンジニアが手取りを計算する方法についてご紹介します。

計算式

一般的にフリーランスエンジニアの年間の手取りは、下記の式で計算できます。

手取り = 年収 − 経費 − 税金・保険料

年収とは、1年間にフリーランスエンジニアとして稼いだ金額の合計です。収入と表現されることもあります。

経費とは、下記のような事業を行うにあたり必要となる費用のことです。

  • 仕事をするために使用するパソコンの購入費
  • 打ち合わせのために使用した会議室の利用料
  • コピー用紙やボールペンといった消耗品費

フリーランスは、国民年金保険料や健康保険料を自分で納付する必要があります。また、個人に課される所得税や住民税、個人事業主に課される消費税も納付が必要です。

実際に自分の手取り金額を計算してみたい方は、個人事業主シミュレーションというサイトで計算できます。

税金や保険料はどれくらいかかるのか、配偶者の給料によって手取りがどのくらい変わるのかなど、具体的な金額がシミュレーションできます。興味がある方はぜひお試しください。

フリーランスエンジニアが支払うべき税金・保険料

税金や保険料は、フリーランスエンジニアの手取りに大きな影響を与えます。

収入金額や家族構成などの各種条件によっても異なりますが、フリーランスエンジニアの場合、税金や保険料が、収入の約20〜30%程度になります。

ここでは、フリーランスが納付すべき税金・保険料をわかりやすく解説します。

国民年金保険料

国民年金は、日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の厚生年金保険に加入していない方を対象とした制度です。会社員の場合は、源泉徴収(給料からの天引き)という形で毎月保険料が徴収されています。

一方、フリーランスエンジニアは自分で保険料を納付する必要があります。

1ヵ月の国民年金保険料は、加入者一人当たり16,610円(2021年8月現在)です。

国民年金保険料は、会社員が納付する厚生年金保険料と比べて低く設定されています。そのため将来受け取る年金の金額は、厚生年金よりも少なくなります。

参照:国民年金|日本年金機構

国民健康保険

会社員は「全国健康保険協会」や「健康保険組合」が運営する健康保険に加入しますが、フリーランスの場合は、市区町村が運営する国民健康保険に加入します。

会社員が加入する健康保険の保険料は、会社が半分負担します。しかし、フリーランスが加入する国民健康保険の場合は、保険料全額を自分で納付します。そのため、負担は会社員より大きいのです。

<国民健康保険料の例>

  • 東京都新宿区在住、世帯主20歳
  • 給与収入240万円(給与所得160万円)
  • 年間の保険料:163,618円

参照:保険料の計算例について:新宿区

介護保険料

介護保険料は、介護が必要な高齢者やその家族を支えるための保険料です。40歳~64歳の方が徴収対象者となります。

介護保険料についても、会社員は健康保険料と同様、会社が半額負担で、毎月の給与から天引きされます。フリーランスは、納付書や口座振替で納めなければなりません

詳細は、お住まいの自治体のホームページを確認しましょう。

所得税

所得税とは、年間の所得にかかる税金です。

所得とは、収入から経費を除いた金額を指します。フリーランスの場合は、自分で計算して申告し納める必要があります。

所得税は、下記の計算式で算出します。(復興特別所得税などは割愛します。)

所得税額  = (年収 – 経費 – 控除金額) × 所得税率

なお、所得税は、所得金額が増えるほど税率も高くなる累進課税という制度が取り入れられています。

住民税

住民税とは、地方税のひとつです。都道府県に納める都道府県民税と、市町村に納める市町村民税の2つを合わせたものを指します。

住民税は所得税と異なり、自治体から送られる通知書を用いて、コンビニなどで納付できます。

個人事業税

個人事業税は、法定業種に該当し年間290万円を超える事業所得のある方が、都道府県に対し納付する税金です。

個人事業税も、8月頃に都道府県から送られてくる通知書で納付できます。

個人事業税は、営んでいる事業によって税率が決まる仕組みです。フリーランスの方で自分が納付の対象となるかどうかわからない方は、東京都主税局のWebサイトで確認しましょう。

消費税(年間売上が1,000万円以上の場合)

消費税は、消費に対して課される税金です。消費者は、何らかの商品の購入、あるいはサービスを受けるとき、実際の金額に対して10%(軽減税率対象の商品は8%)の税金を支払います。

フリーランスの中でも、開業届を出して個人事業主として働く方は事業者の扱いとなり、消費税を国に納める義務が生じます。

ただし、すべてのフリーランスエンジニアに納税の義務があるわけではありません。年間売上高が1,000万円を超えた場合にのみ納税義務が生じます。

【月収・年収別】フリーランスエンジニアの手取り金額シミュレーション

手取り金額シミュレーション

続いて、月収・年収別にフリーランスエンジニアの手取り額をシミュレーションしてみましょう。

※ここでは年収を月収×12ヵ月で算出しています。

年齢 25歳
配偶者 なし
扶養親族 0人
国民健康保険料率 (医療分) 所得割率 7.13% / 均等割額 38,800 円
国民健康保険料率 (後期高齢者支援分) 所得割率 2.41% / 均等割額 13,200 円
国民健康保険料率 (介護分) 所得割率 2.41% / 均等割額 17,000 円
経費 0円

ケース1 月収22万円・年収264万円・白色申告をしたフリーランスエンジニア

ケース1は、月収22万円(年収264万円)のフリーランスエンジニアで白色申告をした場合、手取りは1,913,346円となります。

まだ開業届を出していない駆け出しのフリーランスエンジニアの仮定で、白色申告をシミュレーションすると内訳は下記のとおりになります。

年収 2,640,000 円
国民年金保険料 199,320 円
国民健康保険料 262,834 円
所得税・復興特別所得税 84,800 円
住民税 179,700 円
個人事業税 0 円
消費税 0 円
手取り 1,913,346 円

ケース2  月収40万円・年収480万円・青色申告控除の場合

ケース2は、月収40万円(年収480万円)のフリーランスエンジニアです。

フリーランスの仕事が徐々に軌道に乗り始めた頃で、青色申告をしたとすると、手取りは3,628,042円となります。

具体的な内訳は下記のとおりです。

年収 4,800,000 円
国民年金保険料 199,320 円
国民健康保険料 406,888 円
所得税・復興特別所得税 208,800 円
住民税 316,300 円
個人事業税 40,650 円
消費税 0 円
手取り 3,628,042 円

ケース3  月収90万円・年収1,080万円・青色申告控除の場合

ケース3は、月収90万円(年収1,080万円)のフリーランスエンジニアです。フリーランスエンジニアとして立派に稼げるようになったころと仮定して、シミュレーションしてみましょう。

なお、こちらも青色申告控除を適用します。年間売上が1,000万円を超えているため、消費税を納める点に注意が必要です。

この条件の場合、手取りは6,152,180円となります。

具体的な内訳は下記のとおりです。

年収 10,800,000 円
国民年金保険料 199,320 円
国民健康保険料 820,000 円
所得税・復興特別所得税 1,353,500 円
住民税 875,000 円
個人事業税 320,000 円
消費税 1,080,000 円
手取り 6,152,180 円

※ 消費税は、本則課税、仕入れにかかる費用を0円として計算しています。

【家族構成別】フリーランスエンジニアの手取り金額シミュレーション

フリーランスエンジニアの手取り金額シミュレーション

フリーランスエンジニアの手取りは、家族構成によっても異なります。ここでは家族構成別に手取り額をシミュレーションしてみます。

※個人事業税、消費税はともに課税対象外とします。

年収1,000万のフリーランスの手取りは約680〜733万

年収1,000万円のフリーランスエンジニアの手取り額について、「独身」「既婚・扶養なし」「既婚・扶養あり」という条件で確認しましょう。また、配偶者、子供はすべてのケースで扶養対象であるとします。

最も手取り額が少ないのは40〜65歳の独身の方が、白色申告をした場合で6,687,780円です。

最も手取り額が多いのは、20〜39歳で2人の子供がいる既婚者の方です。手取り額は7,335,180 円になります。同じ年収1,000万円でも、条件によって手取り額に大きな差異があります。

白色申告青色申告
20〜39歳・独身6,801,680 円7,016,180 円
20〜39歳・既婚(配偶者は扶養対象)6,842,580 円7,097,980 円
20〜39歳・既婚・子供2人(家族は全員扶養対象・子は15歳以下学生)7,083,380 円7,335,180 円
40〜65歳・独身6,687,780 円6,902,280 円
40〜65歳・既婚(配偶者は扶養対象)6,728,680 円6,984,080 円
40〜65歳・既婚・子供二人(家族は全員扶養対象・子は16歳以上学生)6,969,480 円7,216,180 円

年収500万円のフリーランスの手取りは349〜402万

続いて、年収500万円のフリーランスエンジニアの手取り額について、年収1,000万円のケースと同条件でシミュレーションします。

最も手取り額が少ないのは20〜39歳独身の方が、白色申告をした場合で3,491,565円です。

手取り額が最も多いのは、20〜39歳で扶養対象の子供が2人いる既婚者の方が青色申告をした場合です。このケースで手取り額は4,026,412円になります。

白色申告青色申告
20〜39歳・独身3,580,602 円3,813,412 円
20〜39歳・既婚(配偶者は扶養対象)3,689,602 円3,884,412 円
20〜39歳・既婚・子供2人(家族は全員扶養対象・子は15歳以下学生)3,846,802 円4,026,412 円
40〜65歳・独身3,491,565 円3,724,140 円
40〜65歳・既婚(配偶者は扶養対象)3,600,565 円3,795,140 円
40〜65歳・既婚・子供二人(家族は全員扶養対象・子は16歳以上学生)3,745,065 円3,937,140 円

フリーランスエンジニアの手取りを会社員と比較!

会社員とフリーランスエンジニアでは、年収が同じでも手取り額が異なる場合があります。

続いて、フリーランスエンジニアと会社員のエンジニアの手取りを比較してみましょう。

フリーランスエンジニアと会社員とでは何が違う?

手取り額の比較を行う前に、フリーランスエンジニアと会社員のエンジニアについて手取りの計算で異なるポイントを把握しておきましょう。

フリーランスエンジニアと会社員のエンジニアとでは、手取り額を計算する仕組みが異なります。

会社員はフリーランスエンジニアと異なり、給与所得控除が適用されます。給与所得控除は、個人事業主でいうところの「経費」に該当し、控除額は所得によって異なります。

■令和2年以降の給与所得控除額

一方、フリーランスエンジニアは、条件を満たすことで青色申告特別控除という控除を受けられます。

ほかにも、会社員とフリーランスとでは保険料の金額が異なります。

フリーランスエンジニアが加入する国民年金保険料の納付額は、収入額に関わらず月額16,610円です(2021年8月現在)。一方、会社員が加入する健康保険の金額は毎月の給与額(厳密には標準報酬月額)によって異なります。

例えば、標準報酬月額が300,000円の場合、会社員が給与から天引きされる保険料は、毎月27,450円となります。

参照:No.2072 青色申告特別控除|国税庁 – 所得税

実際いくら違う?

下記の同条件でフリーランスエンジニア(白色申告者)と、会社員のエンジニアの手取りを比べてみましょう。

  • 年収:500万円
  • 年齢:40歳未満
  • 配偶者・扶養対象者:なし

同じ条件下で比較すると、会社員の方がフリーランスエンジニアより、約55万円程度手取り額が多くなります。

  • フリーランスエンジニア:手取り額3,580,602 円
  • 会社員の手取り額:約4,120,000円

年収額が同じなら、フリーランスエンジニアは会社員エンジニアより手取り額が少なくなるのです。

ちなみに年収500万円の会社員と同じ手取りを得るためには、フリーランスエンジニアは約590万円程度の年収が必要となります。

フリーランスエンジニアが合法的に手取りをUPする方法

手取りをUPする方法

「フリーランスだと、税金や保険料の負担が結構大きいな……」と感じた方が多いのではないでしょうか。

フリーランスエンジニアは、下記4つの方法で手取り額をアップできます。

  • スキルアップする
  • 営業力を身につける
  • 経費を漏れなく計上する
  • 控除を活用する

それぞれの方法を、詳しく解説します。

スキルをアップする

フリーランスエンジニアが手取り額をアップさせる1つ目の方法として、スキルアップが挙げられます。

フリーランスエンジニアの最大の武器はスキルです。スキルがあれば、高単価の案件を受注できます。

また、クライアントがスキルを認めてくれれば、長期的な契約に発展する可能性が高くなります。

営業力を身につける

フリーランスエンジニアが手取り額をアップする方法として、営業力を身につけることも有効です。

営業力があれば、スキルを効果的にアピールしたり交渉でより良い条件を引き出したりできます。

なお、フリーランスエンジニアの営業を成功させるコツ、やってはいけない注意点についてはこちらの記事で解説しています。

フリーランスエンジニアの営業・必勝法8選!成功のコツとやってはいけない注意点
更新日:2024年3月1日

経費をもれなく計上する

フリーランスエンジニアが手取り額をアップするには、経費を漏れなく計上することも意識しましょう。

フリーランスエンジニアは、さまざまな費用を経費として計上できます。業務で使うパソコンやプリンタ、スキルアップのために購入した書籍、そのほか自宅の光熱費の一部なども経費にできます。

経費を計上するには、領収書が必要となるため、ついつい面倒に感じてしまうものです。しかし年間のトータルで考えると、決して少なくない額となります。日頃から経費に対する意識を高くしておきましょう。

控除を活用する

控除の活用も、フリーランスエンジニアが忘れてはならない手取りアップの方法です。

控除は下記のようなものがあります。条件を満たす場合は確定申告で申請しましょう。

基礎控除 誰でも受けることができる。一人当たり38万円を控除可能。
配偶者控除 納税者と生活を共にしている配偶者に対する控除。
ただし、配偶者の収入が103万円以下である必要あり。
納税者本人の合計所得金額によって13万円~38万円を控除可能。
扶養控除 子供、親などの扶養家族がいる場合に適用される控除。
控除額は、扶養家族の年齢や人数によって異なる。
医療費控除 1年間の医療費が10万円を超えた場合、超過分を控除可能。
年収200万円未満の場合には、年収の5%以上の金額が控除対象。
社会保険料控除 自分自身や家族に支払った国民健康保険料を、全額控除可能。
青色申告特別控除 確定申告の際の申告方法によって受けられる控除。
会計取引を現金主義とするか複式簿記で管理するか、またはe-Taxで申告するか等の条件により、10万円、55万円、65万円の控除を受けられます。
専従者控除 従業員である家族に対して支払った給与額の一部を控除可能。
控除額は人数などにより異なる。
なお、青色申告の場合は、「専従者給与」として給与の全額を控除可能。
国民年金基金 国民年金加入者のみ加入可能。
国民年金基金に加入すると、将来受け取る保険料を上乗せ可能。
国民年金基金の掛金は、所得税や市県民税の全額控除の対象となる。

まとめ

フリーランスエンジニアの手取りの計算方法は、会社員と異なります。経費計上が漏れていたり、本来受けることができる控除を忘れていたりすると、手取り額が減少してしまいます。

皆さんが頑張って手にした報酬です。手取りの計算について正しく理解し、手元に最大限の金額が残るようにしましょう。

この記事のおさらい

フリーランスエンジニアの手取りを計算する方法は?

フリーランスエンジニアの手取りは、下記の式で計算できます。

手取り金額 = 収入 − 経費 − 税金・保険料

フリーランスエンジニアが手取りをアップする方法は?

フリーランスエンジニアが手取りをアップする方法は、下記の4つです。

・スキルアップする
・営業力を身につける
・経費を漏れなく計上する
・控除を活用する

この記事を書いた人

元ウェブディレクター/編集者
メイン機はOS9時代からMac。
最近はUnityに興味があります。

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