AIに学習させることはできるの?
具体的にはどう学習させればいいんだろう?
AI(人工知能)が広く普及したことで、AI開発の勉強を始める人が増えました。AI開発を勉強するなかで疑問に感じやすいのが「AIに学習させるにはどうすればいいのか」です。
そもそもAIにおける「学習」とは、AI自らがデータから規則性や傾向を見つけ、思考や判断の精度をあげることを指します。開発しているAIの精度を高めるため、AIに学習させる方法を知りたい人は多いですよね。
そこで、本記事ではAIに学習させるにはどうすればいいのか、その方法を具体的な育成手順や精度が向上するポイントも交えて解説します。AIが学習する仕組みや育てる際の注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
AIに学習させることはできるのか
「AI開発は大企業が行うもの」というイメージを持つ人も少なくありません。AI開発の経験が少なく「自分がAIに学習させることはできるのか」と疑問に感じる人もいるのではないでしょうか。
まずは、次のトピック別でAIに学習させることの可能性について解説します。
そもそも「AIに学習させる」とは
そもそも「AIに学習させる」とは、「AIモデル」の性能を向上させるプロセスのことです。AIモデルとは、例えば「犬と猫の画像を見分ける」のように、何らかの課題をAIで解決するためのプログラムを指します。
AIモデルは、それまでの学習経験にもとづき入力データ(問題)を処理し、課題解決につながる出力データ(答え)を返します。この「学習経験」を増やす作業こそが「AIに学習させる」ということなのです。
つまりAIに学習させるためには、前提としてAIモデルの構築が必要となります。
個人でも精度の向上を目的としたAI学習は可能
個人でも、精度の向上を目的としてAIに学習させることは可能です。昨今では、AIモデルの構築・学習に役立つツールやサービスが多数あるため、AI学習のハードルは下がっています。
具体的には、以下2つの方法でAIモデルの構築・学習が行えます。
- AIモデルを構築できるサービスを活用する
- AI開発向けのライブラリやフレームワークを用いて構築する
1つ目は、「AnyData 画像認識」のようなサービスを活用する方法です。プログラミングの知識がほぼ不要なため、難易度は低いでしょう。ただし有料なことが多く、学習のさせ方に制約があるケースも少なくありません。
2つ目は、後述する「ライブラリ」や「フレームワーク」を用いて、自らAIモデルを構築する方法です。スキルさえあれば、ほぼ無料・かつ柔軟にAI学習が行えます。ただし、基本的にプログラミングスキルが必要となります。
このように、個人の予算やスキルに合った方法でAIに学習させることが可能です。以降では、プログラミングによりAIモデルを構築する2つ目の方法を前提として解説します。
大規模なAIの学習は難易度が高い
AI学習の難易度は、AIモデルの規模によって大きく異なります。小規模なAIモデルであれば個人でも学習させやすくなっていますが、大規模なAIの学習は難易度が高いです。その理由は、主に次の2つ。
- 大量の学習データが必要
- 大規模な学習環境が必要
AIモデルの規模が大きいほど、必要な学習データも増大します。大量の学習データを集めるためには多くの労力が必要となるため、個人での実施は難しくなります。
また、AIモデルの学習にはコンピューターが欠かせません。大規模なAIモデルだと、高性能なコンピューターを複数台用いて長期間にわたり学習させます。そのため、個人では用意が難しい大規模な学習環境が必要です。
個人で独自のAIモデルに学習させる場合、AIの規模には限界があることを知っておきましょう。
AIが学習する仕組み
AI学習には、「機械学習」という技術を活用することが一般的です。機械学習では、AI自身がデータから規則性や傾向をつかみ、より高精度な答えを導き出せる能力を身につけます。
ただし、人間が教科書を読んで学ぶのと同じように、AIには学習データが不可欠です。学習データを与えることが、AIにとっての学習経験になります。何が正解か、何が不正解かを学習から覚えることで、賢くなっていくのです。
なお、AIに学習させる方法としては、大まかに次の3種類があります。
種類 | 概要 |
教師あり学習 | どの学習データが正解かを人間が教えて、正解パターンを覚えさせる |
教師なし学習 | どの学習データが正解かは教えず、AI自身に正解パターンを見つけさせる |
強化学習 | AIの振る舞いに応じて報酬を与え、報酬が最大となるような行動パターンを覚えさせる |
このように、AIは機械学習の手法によって自ら学習していく仕組みです。
AIに学習させる6STEP
ここからは、プログラミングで独自のAIに学習させる流れを、6つのSTEPにまとめて紹介します。
- STEP1:AIの活用目的を明確にする
- STEP2:学習に必要なデータを収集・加工する
- STEP3:機械学習のアルゴリズムを選ぶ
- STEP4:AIモデルを構築する
- STEP5:AIモデルをトレーニング(訓練)する
- STEP6:AIモデルを評価する
STEP1:AIの活用目的を明確にする
まずはAIの活用目的、つまり「AIで解決したい課題」を明確にします。例えば「犬と猫の画像を見分ける」「気温から売上を予測する」のようなものです。AIの学習成果として、どんな機能や答えを求めるのか明確にします。
この段階で何を課題に設定するかで、以降の方向性が変わってきます。慎重に検討しましょう。
STEP2:学習に必要なデータを収集・加工する
前述のとおり、AI学習には元となるデータが不可欠です。AIの活用目的に沿って、AI学習に必要なデータを収集しましょう。例えば「犬と猫の画像を見分ける」が活用目的なら、犬や猫の画像データを収集します。
収集した学習データの量や質がAIモデルの性能に直結するため、重要なプロセスです。データのバリエーションや正解・不正解の配分など、さまざまな観点から高品質な学習データを収集することが求められます。
また、学習データをAIに与えやすくするために加工(前処理)も必要です。例えばデータ形式を統一したり、不要なデータを除外したりします。教師あり学習の場合、データに「ラベル」という答え情報の付与が必要となります。
STEP3:機械学習のアルゴリズムを選ぶ
次に、設定した課題の解決につながる「アルゴリズム」を選びます。機械学習におけるアルゴリズムとは、どのような手順やルールでAIに学習データを処理させるか、という計算方法・計算ルールのことです。
機械学習のアルゴリズムはさまざまですが、主に次のようなものが挙げられます。
課題によって、適したアルゴリズムは異なります。また、複数のアルゴリズムを組み合わせるケースも珍しくありません。それぞれの特徴やメリットを把握し、課題解決につながるアルゴリズムを選択しましょう。
STEP4:AIモデルを構築する
選択した機械学習のアルゴリズムを用いて、AIモデルを構築します。このプロセスでは、後述する「Python」のようなプログラミング言語を用いて、実際にプログラムを作成することになります。
効率的にAIモデルを構築するうえでは、前述のライブラリ・フレームワークが欠かせません。
- ライブラリ:自分のプログラムに取り入れて使える、部品のようなプログラム
- フレームワーク:自分のプログラムを組み込んで使える、プログラムの骨組み
おすすめは後ほど紹介します。ライブラリやフレームワークを活用しつつ、効率的にAIモデルを構築しましょう。
STEP5:AIモデルをトレーニング(訓練)する
構築したAIモデルを「トレーニング(訓練)」していきます。トレーニングとは、AIに学習経験を積ませる作業のこと。具体的には、学習データを与えてAIに答えを出力させる、という作業を繰り返します。
人間に例えると、教科書を読んだり練習問題を解いたりするプロセスです。つまり、このプロセスが本題の「AIに学習させる」に直結します。学習経験を積ませながら、AIモデルの精度を向上させていきましょう。
STEP6:AIモデルを評価する
トレーニング後には、AIモデルを「評価」します。評価とは、AIモデルのトレーニング成果を確かめる作業のこと。具体的には、AIモデルに新しいデータを与えて、どのような答えを導き出すのかを検証します。
人間に例えると、模擬試験に挑戦するプロセスです。模擬試験(評価)の結果に問題があれば、AIモデルのプログラムやパラメータ(内部データ)を調整したり、学習データを変えて再トレーニングを行ったりします。
トレーニングや評価を繰り返すことで、学習成果がAIモデルの精度向上につながっていくのです。
AIの学習には何が必要なのか
プログラミングによりAI学習を行う場合、さまざまな準備が必要です。ここでは、次のトピック別でAIの学習には何が必要なのかを解説します。
必要なもの
AIの学習にあたって事前に準備が必要なものは、主に次の2つです。
パソコン(PC)
AIモデルを構築するうえで、パソコン(PC)が欠かせません。データ収集や加工、プログラムの作成などはすべてパソコン上で行います。ただし、パソコンのスペックによって構築できるAIモデルの規模は変わってきます。
前述のように、大規模なAIモデルは複数台のパソコンが必要になるため、簡単ではありません。しかし一般的なパソコン1台でも、小規模なAIモデルなら構築し、学習させることが可能です。
それでも、AIモデルの学習には多くのITリソース(資源)が必要なため、できる限りスペックの高いパソコンを推奨します。同じ価格なら、ノートパソコンよりもデスクトップパソコンのほうがスペックは高いでしょう。
インターネット環境
パソコン内に学習データやソフトウェアがすでに揃っていれば、オフラインでもAIに学習させること自体は可能です。しかし、それまでの準備にはインターネット環境が欠かせません。
AI学習には多くの学習データが必要になるため、インターネット上から幅広く収集することになります。また、開発に使うライブラリやフレームワークも、基本的にインターネット上からダウンロードします。
AIモデルに学習させるまでの過程で、インターネットを利用することは多いです。そのため、安定的に通信が行える有線LANのインターネット環境を推奨します。
求められる知識・スキル
AI学習に求められる主な知識・スキルは、次の5つです。
1つずつ、順番に解説します。
プログラミングスキル
AIモデルを構築できるサービスを使わない場合、プログラミングスキルが不可欠です。プログラムを記述することで、学習データを機械学習アルゴリズムにもとづき処理する仕組みを構築します。
AIモデルの構築に使われるポピュラーなプログラミング言語は「Python」です。文法がシンプルで覚えやすいため、これからAI学習を始めるならPythonスキルの習得をおすすめします。
機械学習・ディープラーニングの知識
AI学習に欠かせない技術である機械学習の知識も不可欠です。教師あり学習・教師なし学習・強化学習といった基本概念、線形回帰やクラスタリングといったアルゴリズムなどの知識を身につけましょう。
また昨今では、機械学習のなかでも「ディープラーニング(深層学習)」が注目されています。ディープラーニングとは、人間の脳を模した「ニューラルネットワーク」という仕組みで、高度な機械学習を実現する技術のこと。
将棋AIや画像認識システムなど、さまざまな用途でディープラーニングが活用されています。機械学習に加えてディープラーニングの知識も身につけると良いでしょう。
数学の基礎知識
実は、AI学習には数学の基礎知識も求められます。機械学習アルゴリズムは、数学の理論がベースとなっているためです。具体的には、次の3分野は基礎レベルで知識を身につけておきましょう。
- 微分積分学
- 線形代数学
- 確率論・統計学
こうした数学の知識を身につけることで、機械学習アルゴリズムの理解もスムーズになります。
ライブラリ・フレームワークの活用スキル
AIモデルの構築を効率化するうえでは、前述したライブラリ・フレームワークの活用がポイントです。主要なライブラリやフレームワークの知識について学び、活用できるスキルを身につけておきましょう。
AI開発・機械学習において主要なライブラリ・フレームワークを下表にまとめました。
名称 | 概要 |
Pandas | データの加工や処理に役立つライブラリ |
NumPy | 高度な数値計算が行えるライブラリ |
scikit-learn | 機械学習アルゴリズムの実装を幅広く支援するライブラリ |
TensorFlow | Google社が開発した機械学習・ディープラーニング向けのフレームワーク |
上記のライブラリ・フレームワークは、すべてPythonを用いたAIモデルの構築に活用できます。基本は押さえておくと良いでしょう。
データの分析・処理に関する知識
AIモデルの学習データを用意するうえで、データの分析・処理に関する知識も必要となります。不要なデータの除外やデータ形式の統一など、多くのデータを適切に扱うことが求められるためです。
また、「データベース」の知識も学ぶことをおすすめします。データベースとは、大量のデータを効率的に扱える仕組みです。データベースの扱い方を学べば、データの加工や管理などを効率化できるでしょう。
AIの学習精度・効率を高める3つのコツ
いざAIモデルに学習させてみると、思うように精度が向上しないケースも少なくありません。
そこで、ここからはAIの学習精度や効率を高めるコツを、3つにまとめて紹介します。
学習データの量・質を精査する
AIモデルの性能は、学習データの量や質に大きく依存します。AIモデルに学習成果が見られない場合、学習データの量や質を精査しましょう。具体的には、次のような観点でチェックすることが必要です。
- データの量が不足していないか
- データが偏り過ぎていないか
- 異常データが含まれていないか
学習データの量や質を改善することで、より効果的なAI学習が可能となるでしょう。
出力の条件を見直す・改善する
トレーニングで期待した出力データが得られない場合、出力の条件を見直しましょう。AIモデルは、プログラムで設定された条件にしたがって答えを出力します。条件が妥当でないと、AIモデルの出力精度は向上しません。
例えば「犬の画像かどうか」を判定するAIモデルを考えましょう。このAIモデルは、入力された画像データを処理して、類似度をスコアとして算出します。類似度が特定の値Xを上回る場合に、「犬の画像」と判断する仕組みです。
犬の画像を見逃しやすい場合は、Xの値を下げれば良いでしょう。反対に、犬でない画像を誤認しやすい場合は、Xの値を上げれば改善が期待できます。このように、より妥当な出力が行われるように条件を見直しましょう。
AIモデルの評価結果・改善点を反映させる
トレーニング後の評価段階で見つかった改善点も、AIモデルにしっかり反映することが大切です。
前述のように、AIモデルの評価ではトレーニング時と異なるデータを主に使います。しかし、トレーニングでは高精度な出力が行えても、評価になると精度が大きく下がる場合も。この場合、「過学習」の疑いがあります。
過学習とは、トレーニング用の学習データにAIが慣れ過ぎてしまい、未知の入力データを正しく処理できなくなること。簡単に言えば、偏った練習問題ばかり解き過ぎて、模擬試験で登場した新出問題に対応できないイメージです。
そのため、トレーニング時の問題だけでなく、評価時に発生した改善点もAIモデルに取り入れましょう。
AIに学習させる際の注意点
AIに学習させる際は、次の2点に注意しましょう。
- 学習に利用してもよいデータだけを収集する
- AIサービスを不正に学習させることは避ける
学習データを収集する際に、AI学習に利用してもよいデータか必ず確認しましょう。Webサービスによっては、データ収集を禁止しているケースもあります。特に、イラストのような著作物のデータ収集には注意が必要です。
また、「ChatGPT」のようなAIを活用したサービスは、ユーザーのデータをAI学習に利用する場合があります。つまり、ある程度はユーザーがAIに学習させることが可能です。しかし、不正に学習させることは避けましょう。
挫折なくAIに学習させるには
独学でAI学習について勉強する場合、最大の注意点は挫折のリスクが高いことです。前述のとおり、AI学習のためには多くの知識・スキルを身につけなければなりません。そのため、学習途中でつまずくことも増えるでしょう。
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本記事では、AI学習に関する次の6点についてお伝えしました。
独学でもAIに学習させることは可能です。ただし、さまざまな知識・スキルを身につける必要があり、挫折のリスクは決して低くありません。挫折せずにAI学習を実現したい場合は、スクールの利用も考えましょう。
この記事の監修者
フルスタックエンジニア
音楽大学卒業後、15年間中高一貫進学校の音楽教師として勤務。40才のときからIT、WEB系の企業に勤務。livedoor(スーパーバイザー)、楽天株式会社(ディレクター)、アスキーソリューションズ(PM)などを経験。50歳の時より、専門学校でWEB・デザイン系の学科長として勤務の傍ら、副業としてフリーランス活動を開始。 2016年、株式会社SAMURAIのインストラクターを始め、その後フリーランスコースを創設。現在までに100名以上の指導を行い、未経験から活躍できるエンジニアを輩出している。また、フリーランスのノウハウを伝えるセミナーにも多数、登壇している。
本記事の解説内容に関する補足事項
本記事はプログラミングやWebデザインなど、100種類以上の教材を制作・提供する「侍テラコヤ」、4万5,000名以上の累計指導実績を持つプログラミングスクール「侍エンジニア」を運営する株式会社SAMURAIが制作しています。
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