どんなことができるの?
「機械学習」「AI」どう違うの?
興味はあるんだけどどうやって始めればいい?
こんにちは。文系出身で現役エンジニア8年目になる佐藤です! 今回は最近よく聞かれるようになった「ディープラーニング」についての解説をしていきます。
皆さんは「ディープラーニングってなに?」と聞かれた時、どんなものなのかはっきり答えることができますか?
最新技術ということもあって、私のような文系出身で機械はちょっと苦手……という方や、ITに馴染みの無い方には意味を検索しても難しい言葉がいっぱいで、理解するのが難しかったりしますよね。
この記事では、「ディープラーニングとは何か?」をどんな方にも分かりやすく解説していきます。そして、興味があるという方に向けて、始めるのに必要なもの・おすすめの書籍等の紹介も行っていきますのでぜひ最後までご覧ください。
それでは早速、ディープラーニングの概要について一緒に見ていきましょう!
この記事の目次
ディープラーニングとは
この章ではディープラーニングはこんなもの、という概要から解説していきます。まずは言葉の意味や仕組みを理解していきましょう。
人と同じような仕組みで機械に学習させる方法
ディープラーニングという言葉が一般にも話題になったのは、囲碁でAI(人工知能)の「AlphaGo」が人間に勝ったというニュースではないでしょうか。
⇨ 財経新聞:囲碁AIが最強棋士に3戦全勝、完全決着
ディープラーニング(深層学習)は「ニューラルネットワーク」と呼ばれるアルゴリズムを何層も使って機械がデータから自動で学習する方法のことを言います。
ネットワークの層が多ければ多いほど、複雑な判断を正確に行えるため、「ディープ(深層)」「ラーニング(学習)」と呼ばれています。
このディープラーニング、じつは人の脳神経細胞(ニューロン)を模して作られた仕組みで、人と同じように学習することができるようになっているんです。高度なAIの誕生にますます近づいている……という感じがしますよね。
近年注目されているディープラーニングですが、1980年代から理論だけは存在していました。昔は技術が追い付いておらず、何層もニューラルネットワークを使うと機械の判断精度がどんどん下がっていってしまうという問題があり、あまり話題には上りませんでした。
ですが、2000年代になり研究が急速に進み、その問題が解消されたため「ディープラーニング」という言葉が話題になったというわけなんです。
ディープラーニングの概要がなんとなくつかめたところで、次に詳しい仕組みについて見ていきましょう。
ディープラーニングの詳しい仕組み
先ほども解説にあったように「人の脳神経細胞のネットワーク」に似ている仕組みになっていて、大きく3つの層に分かれています。
入力層
一つめは、入力層(input layer)です。ここはデータが入ってくる部分です。人で言うと目や耳、手などいろいろな部分からデータが入ってきますよね。
隠れ層
二つめは、隠れ層(hidden layers)と呼ばれる部分です。この層が多ければ多いほど複雑で正確な判断ができます。
人なら、今までの経験や知識から見たもの・聞いたものが何だったか判断しますよね。経験や知識が少なければ正確な判断ができないので、ディープラーニングでもこの層の多さがいかに大切かがお分かりいただけるかと思います。
出力層
三つめは、出力層(output layer)です。判断した結果を出力する部分です。
⇨ MathWorks:ディープラーニングの仕組み
このような仕組みでディープラーニングはできていますが、人のようになんでも判断できるところまでは到達していません。目的別に学習させ、その目的に合った判断をすることが可能であるレベルになっています。
今後は人のように判断できるディープラーニングのモデルが開発されていくかもしれません。ワクワクする夢のある分野ですよね。
次に、現在のディープラーニングが抱えている問題についても簡単に見ていきましょう。
現在のディープラーニングが抱える問題
多層のネットワークを使うと判断精度が下がるという問題を解決し、今後も発展が期待されるディープラーニングですが、現在注目されている問題点もあります。
ディープラーニングの「ブラックボックス問題」と呼ばれているもので、ディープラーニングで機械が判断し出力した結果が、どんな経路・経緯で出されたものなのかが分からないという問題です。
ブラックボックスというのは、プログラミングでよく使われる言葉です。中身がどんな動きをしているのか分からなくても、入力することができれば結果を得られることを言います。
ディープラーニングは現在この状態で、中でどんなネットワークを辿って結果が出たのか分からないという状況になっているものがあります。どんな理由で結果が出たのか分からないと、間違った結果の場合にどこで間違った判断をしてしまったのか分からないですよね。
また、結果の理由が分からないと利用者の信頼を得ることが難しくなってしまい、事業に活用されないという問題もあります。現在、結果の説明ができるAIの開発など対策の研究も行われているので、近々解決する問題かもしれません。
ディープラーニングの概要についてはここまでです。次はディープラーニングでできることを具体的に見ていきましょう。

ディープラーニングでできること
この章ではディープラーニングでできることを詳しく見ていきます。
画像・音声認識ができる
ディープラーニングを最初話題にしたのは高精度な画像認識でした。現在では顔認証システムや、人を認知して止まる自動車のシステムなどに使われています。
また、話して検索する機能や家電を動かしたりする機能には音声認識が使われています。音声認識も最近とても精度が上がってきているため、スマートスピーカーなどの機械に話しかけるシーンが増えてきていますよね。
ディープラーニングでは、入力されたデータの特徴をほぼ自動で抽出して結果を出力してくれます。機械学習であれば、特徴の抽出は人が設定する部分なので、データに深い知識が必要です。
ディープラーニングならデータに関して知識がない、という場合でも結果を出すことができるので注目されているんです。
音声・画像を生成することができる
認識とは別に生成することもできます。例えば、白黒写真からカラー写真の画像を生成したり、線画に自動で色を付けたりするシステムです。
また、3Dの画像データを作成することもできるため、建築・内装のデザインなども自動で生成できるようになってきているようです。
音声を生成し、本を読み上げることもできます。現在ではかなり不自然な発音がなくなり、機械の音声でも聞きやすくなりましたよね。また、作曲なんかもディープラーニングで行えるようになってきているんです。
言葉を理解して会話を生成することができる
ディープラーニングでは言葉を理解して、会話を生成したり、翻訳することができるんです。チャットボットの「りんな」などが有名で、人と話しているかのように会話をすることができます。
⇨ 日本マイクロソフト:りんな
今後は、同時翻訳に関する技術の研究や、より自然に会話できる技術の研究が進むことが予想されています。電話対応が全て機械になる日も近いのかもしれませんね。
危険を察知して知らせることができる
ディープラーニングに危険やエラーの学習をさせれば、それを未然に防ぐよう知らせてくれるシステムも作ることができます。現在では工場などのセンサーデータなどを学習し、未然に危険やエラーを防ぐという使われ方をしているようです。
以上が、現在のディープラーニングで可能なことの一覧です。今後さまざまな広がりをみせていくかもしれないので、もっとできることが増えるかもしれませんね。
次に、ディープラーニングとAIに関する言葉の関係性について解説していきます。
ディープラーニングとAIの関係性
「ディープラーニングとAIは一緒?」「どんな関係性?」そう疑問に思う方も多いでしょう。
ディープラーニングはAIを支える一つの技術です。AIを搭載したロボットなどを作るために、ディープラーニングや機械学習などの学習手法が生まれたと考えると分かりやすいかと思います。
AIに関して詳しく知りたい方は次の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
ディープラーニングと機械学習の関係性
さらに良く混同されてしまいがちなディープラーニングと機械学習ですが、実は機械学習という大枠の中でディープラーニングが生まれた経緯があります。
機械学習の特徴は次のようなものがあります。
- 開発者が注目してほしい特徴(色や形など)を設定する
- 設定した内容に沿って特徴の法則を機械が自動で法則化する
- ある程度学習の方向性を開発者が制御できる
ディープラーニングの特徴は次のようなものがあります。
- 開発者が注目してほしい特徴をほぼ設定しなくてよい
- 特徴を自動で法則化する
- 学習の方向性を制御するのが難しい
このように機械学習の進化版がディープラーニングといえますが、2つにはそれぞれ特徴があります。
注目してほしい特徴が言葉で説明しにくい場合、収集するデータに関しての知識が浅い場合などは、ディープラーニングを選んだほうが良いでしょう。
どちらを学習しようか悩んでいるなら
使える機械の性能やデータの量でも左右されるので、そちらも注目しましょう。
データの量 | 性能 | |
ディープラーニング | 特徴をいちから法則化するため、非常に多く必要 | データを多く扱うため、良い性能のマシンが必要 |
機械学習 | 注目点が設定されているので、比較的少なくても可能 |
データが少なければ、そこまで良い性能のマシンではなくても可能 |
もし、使えるマシン・使えるデータの量が決まっているなら、その要素にも注目してどちらを学習するか決定することをおすすめします。
次に、ディープラーニングを学ぶなら取得したい資格について紹介します。
ディープラーニングを学ぶなら取得したい資格
ディープラーニングを学ぶなら、資格取得を目指すのもおすすめです。ディープラーニングに関する資格として、注目を集めているのが「G検定」です。
G検定を主催する一般社団法人日本ディープラーニング協会が行なった試験実施レポート(2019年12月版)によれば、受験動機の44.2%が現在の業務・学業での活用から、34.2%がAIやディープラーニングへの興味からでした。
そのため、ディープラーニングについて勉強して、実務に役立てたい!と思うなら、G検定を受験してみるのもいいですね。
⇨ 一般社団法人日本ディープラーニング協会:試験実施レポート
資格を取得するメリット
AIに関する知識が全くない場合、どこから勉強したらいいかわからないですよね。G検定の試験科目はAIに関する基礎知識を網羅しているため、受験勉強をすることでAIをビジネスに活用するために必要な知識を体系的に学べます。
合格率は60%から70%前後のため、腕試しにもちょうどいいですね。
経済産業省が実施した「IT人材需給に関する調査」によれば、国内においてAI分野の人材需要が高まることで、約12万人の人材が不足すると予測されています。そのためAIに関する知識を持っていることで、将来的に転職で有利になる可能性もあります。
このことからも、今からG検定の資格を取得しておくメリットがあると言えますね。
⇨ 経済産業省:IT人材需給に関する調査
G検定とは
「G検定」は、一般社団法人日本ディープラーニング協会が2017年からスタートした認定資格です。受験者数の累計は21,275名(2019年12月版)、合格者数の累計は14,523名(2019年12月版)で、年々受験者数が増えています。
G検定の試験概要は次の通りです。
- 受験資格:なし
- 試験日程:年3回(3月・7月・11月)
- 試験時間:120分
- 実施方法:オンライン受験
- 出題範囲:シラバスより出題
- 受験費用:一般13,200円(税込) / 学生5,500円(税込)
- 試験範囲(シラバス)
- 人工知能(AI)とは(人工知能の定義)
- 人工知能をめぐる動向
- 人工知能分野の問題
- 機械学習の具体的手法
- ディープラーニングの概要
- ディープラーニングの手法
- ディープラーニングの研究分野
- ディープラーニングの応用に向けて
このようにAIに関する知識から、ディープラーニングに関する知識まで幅広く問われます。G検定に合格することで、ディープラーニングの基礎知識を有し、適切な活用方針を決定して、事業応用する能力を持つ人材であることを証明することが可能です。
そのため、ソフトウェア業、情報処理・提供サー ビス業を中心に、幅広い職種の方が受験しています。
⇨ 一般社団法人日本ディープラーニング協会:G検定とは
勉強方法
G検定の勉強をする場合は、次におすすめする推薦図書を繰り返し読んで勉強していくといいでしょう。また、金銭的に余裕があれば、通信講座で学ぶのもおすすめです。
資格取得の勉強の場合、過去問を使って勉強するのが一般的ですが、残念ながらG検定の過去問題集は販売されていません。そのため、出題形式は一般社団法人日本ディープラーニング協会のホームページに掲載されている例題を参照してくださいね。
試験対策のためのおすすめの書籍
G検定の試験勉強をする際には、まずは下記の4冊で勉強しましょう。
一般社団法人日本ディープラーニング協会から出版されている公式テキストです。試験範囲を網羅し、各章末には解説付きの練習問題がついているため、知識が定着したかどうかを確認しながら勉強を進めることができます。
G検定合格者を多数輩出するスキルアップAI株式会社の明松 真司氏・田原 眞一氏の両氏が執筆した、G検定に対応した問題集です。
出題傾向を徹底分析した模擬問題が収録されているため、試験前は一通り問題を解いておくといいでしょう。
ディープラーニングがどのようにビジネスの場面で活用されているのかという国内の事例が35掲載されています。そのため、「深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト) 公式テキスト」で学んだ内容を、より深める1冊として読んでおくといいでしょう。
「ディープラーニング活用の教科書」と同じく、実際の活用事例について詳細に収録されています。そのため試験勉強の副教材として一通り目を通しておくといいでしょう。
一般社団法人日本ディープラーニング協会のホームページには、合格者の推薦図書が紹介されているため、余裕があれば興味があるものを読んでみるのもおすすめです。
⇨ 一般社団法人日本ディープラーニング協会:推薦図書
⇨ amazon:徹底攻略 ディープラーニングG検定 ジェネラリスト問題集
E資格との違い
G検定に対して、「E資格」はエンジニア向けの資格です。E資格に合格することで、ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力や知識を有していることを証明できます。
G検定とは違い受験資格があるため、受験するためには、JDLA認定プログラムを試験日の過去2年以内に修了しておく必要があります。
JDLA認定プログラムを提供している事業者は、一般社団法人日本ディープラーニング協会のホームページに紹介されています。通学講座オンラインの講座が中心のため、日本全国どこからでも学ぶことが可能です。
⇨ 一般社団法人日本ディープラーニング協会:E資格とは
このように E資格は、G検定に比べて難易度が高く、実践的な内容になっています。そのため、まずはG検定からチャレンジするといいでしょう。
次に、ディープラーニングを始めるために必要なものを紹介していきます。
ディープラーニングを始めるのに必要なもの
この章ではディープラーニングに必要なものを紹介していきます。興味があるけど何から始めよう、という方はぜひこちらを参考に準備を始めてください!
ディープラーニングができるマシンが必要
まずはマシンが必要です。先ほども紹介したように、データを多く扱う場合はマシンの性能について気にする必要があります。学習を始めてデータを多く扱うようになり不便を感じたら、ディープラーニング用のPCを検討してみてはいかがでしょうか?
ディープラーニング用のPCは、GPUが搭載されている物を選びましょう。GPUは画像描写に関する処理が得意な部品で、CPUだけでは処理に時間がかかるものも高速で処理することができます。
また、メモリもできるだけ多いほうが良いでしょう。ノートパソコンでもディープラーニング用のマシンが発売されているので、自分のスタイルに合った端末をぜひ検討してみてください。
ディープラーニングの開発環境についてはこちらの記事でも詳しく解説しているので、気になる方はぜひご覧ください。
プログラミング知識も必要
そしてもちろん、プログラミングの知識も必要になってきます。ディープラーニングで使える言語には
- Python
- MATLAB
- R
などがありますが、初めてプログラミングを学習するという方には「Python」がおすすめです。ディープラーニング以外にもいろいろなものを作ることができる言語なので、楽しく学習できるはずです。
おすすめ言語はこちらの記事で詳しく紹介しているので、これから学習する方はぜひこちらもご覧ください。

まとめ
今回は、近年話題になっているディープラーニングや関連資格について紹介しました。
AIに興味があるけど、どんなものなのか分からないと思っていた方の疑問が解決すれば筆者も嬉しいです。もし学んでみたいと思った方は、ぜひG検定からチャレンジしてみてくださいね。
それでは次の解説で!