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減価償却費とは?仕訳や計算の方法を具体例とともに解説!

減価償却費とは、企業が所有する固定資産の価値を正しく把握するための仕組みです。

ここでは、減価償却費の基本的な定義から計算方法、会計と税法上の取り扱い、実務適用例まで詳しく解説します。また、よくある疑問や注意点についても触れています。

減価償却費への理解を深め、経営や経理業務に役立てましょう。

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目次

減価償却費の基本的な意味と重要性

減価償却費の基本的な意味と重要性
減価償却費の基本的な意味と重要性

減価償却費とは、資産の価値が経年劣化することを考慮し、その価値の減少分を費用として毎年計上するものです。ここでは、減価償却費の概要・定義や必要性について、詳しく解説していきます。

減価償却費とは?

減価償却とは、長期間にわたって利用される資産の価値が時間とともに減少し、最終的には価値がゼロになるという考え方を指します。毎年資産の価値が減少する分を計上する勘定科目が、減価償却費です。

減価償却費の対象となる資産は、建物や自動車、パソコンなど、数年にわたって利用される有形固定資産や、特許権やソフトウエアといった無形固定資産です。反対に、土地、書画、骨董品など時間が経っても価値が変わらないものは減価償却費の対象にはなりません。

減価償却費を計上すると、企業は資産の実際の価値低下を反映させられます。これにより、財務諸表や会計情報がより正確になり、投資家や関係者に対して適切な情報を提供できます。

なぜ減価償却費が必要なのか

減価償却費は、毎年の利益を正確に会計に反映するために必要です。たとえば、ある会社が1億円をかけて新しい工場を建設したとします。もし、この1億円を丸ごと費用として計上すると、その年の会社の利益が大幅に減少してしまいます。

このような問題を避けるために、減価償却費の考え方が活躍します。減価償却費は、資産を利用する予定の耐用年数に基づいて、取得費用を年々分割して計上します。すると、資産の実際の使用期間に応じた費用を毎年反映できます。

たとえば、前述の耐用年数を10年とし、減価償却費を毎年同じ額計上する場合を考えましょう。すると、毎年1,000万円ずつの減価償却費を計上することになります。このように分割することで、会社の利益を一度に大きく減らすことなく、実際の経済活動に即した財務情報を記録できるでしょう。

減価償却費に関連する注意点

減価償却費に関する注意点としては、計算や仕訳方法によって、財務諸表の見え方や会計上の影響が異なることが挙げられます。

まず、減価償却費の計算方法には、「定額法」と「定率法」の2つがあります。定額法では、毎年一定額を減価償却費(費用)として計上します。

一方、定率法では、資産の残存価値に一定率を乗じた額を減価償却費に算出します。定率法の特徴は、最初の年に減価償却費が最も大きくなり、その後は徐々に小さくなる点です。

建物や無形固定資産(ソフトウエアや特許権など)は通常、定額法を採用しますが、有形固定資産(機械や自動車など)については事業者が計算方法を選択できます。一般的には、より早く多くの額を費用として計上できる定率法を選択する場合が多いです。

また、減価償却費の仕訳方法には、「直接法」と「間接法」があります。直接法では、固定資産から減価償却費を直接差し引く方法です。以下は、直接法の仕訳例です。

借方貸方
減価償却費10,000機械10,000

一方、間接法では、「減価償却累計額」という勘定科目に減価償却費を計上します。間接法では、元の固定資産の価格が貸借対照表に残るため、一般的により広く使用されています。

借方貸方
減価償却費10,000減価償却累計額10,000

減価償却費の具体的な計算方法

減価償却費の具体的な計算方法
減価償却費の具体的な計算方法

減価償却費の具体的な計算方法には、定額法や定率法などがあります。ここでは、具体例と共にそれぞれの計算方法を解説します。

減価償却費の基本的な計算方法

減価償却費の基本的な計算方法には、定額法と定率法の2つのアプローチがあります。ここでは、それぞれの計算式と特徴を紹介します。

定額法

定額法では、毎年一定の金額を減価償却費として計上します。具体的な計算式は以下の通りです。

減価償却費(定額法) = (資産の初期投資額 – 残存価値) / 耐用年数

耐用年数は資産の経済的寿命を示し、税法や会計基準に基づいて定められます。

定額法では、毎年の減価償却費が一定額であるため、財務管理や予算編成が容易です。また、資産の価値減少を予測しやすいので、将来の修理や交換のための資金を適切に準備できます。

定率法

定率法では、毎年の減価償却費を資産の残存価値に対する一定の割合で計算します。具体的な計算式は以下の通りです。

減価償却費(定率法) = (資産の初期投資額 – 残存価値) × 定率

定率は資産の種類や業界によって異なります。たとえば、機械の場合は年率10%や20%が一般的です。

定率法のメリットは、初期の減価償却費が大きくなり、徐々に減少していく点です。そのため、資産の初期投資額を迅速に回収できます。加えて、資産の経済的寿命に対して前倒しで減価償却費を計上できるため、事業における経費を早めに計上することが可能です。

一方、デメリットは、初期の費用が大きいため、事業の初期負担が増えることや、将来の修理や交換のための資金が不足する可能性がある点です。

(出典:国税庁「確定申告書等作成コーナー 定額法と定率法による減価償却」

具体例による計算方法の理解

ここでは、減価償却の対象となる建物、機械設備、ソフトウエアなどの具体例を挙げながら減価償却の計算方法を解説します。

建物

建物の場合、一般的に定額法が用いられます。

減価償却費(定額法) = (資産の初期投資額 – 残存価値) / 耐用年数

たとえば、建物の取得価格が1億円で耐用年数が20年の場合、年間の減価償却費は500万円となります。

500万円= (1億円 – 0円) / 20年

機械設備

一方、機械設備には定率法を利用するのが一般的です。

減価償却費(定率法) = (資産の初期投資額 – 残存価値) × 定率

たとえば、機械設備が20万円で定率が10%のケースでは、最初の1年目の減価償却費は20,000円です。

20,000= (200,000-0) × 0.1

一方、2年目は残り180,000円にさらに定率10%を掛けた額、18,000円が減価償却費です。

18,000= (200,000-20,000) × 0.1

このように、定率法では年を経るごとに減価償却費が小さくなるのが特徴といえるでしょう。

ソフトウエア

ソフトウエアのような無形資産は、定額法が一般的です。ソフトウエアの場合、取得コストを耐用年数で均等に分割することで年間の減価償却費を算出します。耐用年数はソフトウエアの種類や使用状況によって異なりますが、一般的には3年から5年程度が一般的です。

10,000円のソフトウエア(耐用年数5年)の場合は、毎年の減価償却費は2,000円です。

2,000円(1年の減価償却費)= (10,000円 – 0円) / 5年

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減価償却費の会計と税法上の取り扱い

減価償却費の会計と税法上の取り扱い
減価償却費の会計と税法上の取り扱い

減価償却費の会計処理には「直接法」と「間接法」の2種があり、企業によって使い分けられています。ここでは、各仕訳方法の違いや、税法上の注意点について解説します。

減価償却費の会計処理

減価償却費の会計処理には、直接法と間接法の2種類があります。ここでは、それぞれの違いについて解説します。

直接法

直接法では、減価償却費を固定資産から直接差し引く方法です。たとえば、10,000円の機械(耐用年数10年)を定額法で減価償却する場合の仕訳は、以下の通りです。

借方貸方
減価償却費1,000機械1,000

この方法では、貸借対照表上に記載される固定資産の価値が帳簿価額(固定資産の減価償却後の価値)となるため、その時の価値が分かりやすいというメリットがあります。

一方、固定資産の取得価格が分かりにくくなるという点がデメリットです。

間接法

間接法では、「減価償却累計額」という勘定科目に減価償却費を計上します。たとえば、10,000円の機械(耐用年数10年)を定額法で減価償却する場合の仕訳は、以下のようになります。

借方貸方
減価償却費1,000減価償却累計額1,000

間接法では、減価償却累計額が資産の評価額の減少分として反映されます。

こちらの方法では、元の固定資産の取得価額が残り、帳簿価格も「固定資産の取得価額 – 減価償却累計額」から計算しやすいという点がメリットです。

税法上の減価償却費

まず、減価償却費の会計上と税務上の取り扱いには違いがあります。会計上の減価償却は、資産の使用年数に基づいて経費を計上します。つまり、会社が償却期間を自由に決めることができます。反面、税務上の減価償却費は、税法で定められた「法定耐用年数」に基づいて計算されます。

このため、会計上の償却期間と税法上の法定耐用年数が異なる場合、両者の間に差が生じることがあります。会計上では早めに経費化される一方で、税務上では長期間にわたって償却費が計上される場合があります。

税務上の取り扱いに関する注意点として、まず法定耐用年数を正確に把握することが重要です。各種償却資産には税法で定められた法定耐用年数がありますので、それに基づいて償却費を計算する必要があります。

また、減価償却費の計上は、特例措置や減価償却基準の変更など、税法の改正によって影響を受けることがあります。そのため、最新の税法を確認し、適切な処理を行うことが重要です。必要に応じて、税理士など専門家の力を借りるとよいでしょう。

減価償却費の実務適用とその効果

減価償却費の実務適用とその効果
減価償却費の実務適用とその効果

ここでは、実務上での減価償却費の計算方法や、業界ごとの慣習について紹介します。また、減価償却費を適切に計算するメリットについても解説していきます。

減価償却費の実務上の適用例

減価償却費用の計算方法は、資産種類によって異なります。一般的には、建物や無形固定資産(ソフトウエアや特許権など)は定額法、それ以外の資産は定額法・定率法を選択できます。

また、建物の減価償却でも、業種によって異なるケースもあります。たとえば、建築業界では建物の耐用年数に基づいて減価償却費を計算しますが、ホテル業界では客室や設備の耐用年数を考慮し、部分的な減価償却費を計上するケースが多いです。

その他、乗用車や飛行機等も、耐用年数に基づいて減価償却費を決めるか、走行距離で決めるかなど、さまざまな基準が存在します。

業界や産業の特性に応じて適切な減価償却方法を選択しましょう。一般的な方法に加えて、特殊な資産に対する適用方法を検討することで、正確な減価償却費を計算できます。

減価償却費を適切に計算・管理することの効果とは

まず、適切な減価償却費の計算・管理により、企業の利益計算において正確な経費を反映できます。減価償却費は資産の経済的価値の消耗を反映するものであり、それを適切に計算することで、企業の利益を正確に評価できます。これにより、経営判断や投資計画の基礎となる財務情報の信頼性が高まります。

また、適切な減価償却計画は企業の資産管理において重要な役割を果たします。適切な計画を立てることで、資産の経済的寿命や価値の変動に応じて、適切なタイミングで減価償却費を計上可能です。これにより、資産の劣化や価値の変動に対応し、資産の適切な管理と価値の最大化を図れるでしょう。

さらに、減価償却費の適切な管理は税務上のメリットももたらします。適切に計算された減価償却費は、税務申告において経費として認められます。よって、企業の課税所得を適切に評価し、税金負担を最適化できます。適正な減価償却計画を立てることで、税務上の節税効果を得ることができるでしょう。

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「減価償却費」に関するよくある質問(FAQ)

よくある質問
よくある質問

ここでは、減価償却費についてよくある質問と回答をまとめました。

減価償却費はどのような概念かわかりやすく説明してもらえますか?

減価償却費とは、時間とともに減少していく資産の価値を計上し、現在の資産の価値を正しく表現するための概念です。

たとえば、ある企業が高額な機械を購入した場合、その機械の価値は時間とともに減少していきます。減価償却費を計上することで、機械の価値の減少に対応し、経済的利益を均等に分散させることができます。

減価償却を行わないとどのような影響がありますか?

まず、減価償却を行わないことによって、資産の価値の減少を正確に反映できなくなります。資産は使用や経年劣化によって価値が低下していきますが、減価償却を行わないとその減少を適切に計上することができません。その結果、企業の財務状況が実際よりも過大評価される可能性があります。

また、減価償却を行わないと資産の価値を正確に把握できないため、資産管理や投資判断が困難になります。資産の経年劣化や更新時期を把握せずに管理すると、メンテナンス計画を立てづらいというデメリットもあるでしょう。

さらに、減価償却を行わないことによって、減価償却費を経費計上できずに課税所得が増加し、税金が増える可能性があります。

減価償却と耐用年数にはどのような関係がありますか?

耐用年数は資産が完全に価値を失うまでの期間を示しており、減価償却費はこの耐用年数に基づいて計算されます。

税法では、「法定耐用年数」として固定資産の種類や構造、利用方法によって固定資産の耐用年数が定められています。企業は法定耐用年数を目安にして、資産の減価償却費を計算します。

(出典:国税庁「確定申告書等作成コーナー 耐用年数表)」

耐用年数が長い場合、資産の価値が長期間にわたって減少するため、年間の減価償却費は相対的に少なくなります。逆に、耐用年数が短い場合は、資産の価値が急速に減少するため、年間の減価償却費が相対的に多くなります。つまり、耐用年数が長いほど、資産の減価償却費は少なくなるのです。

減価償却資産とは具体的に何を指しますか?

減価償却資産とは、企業が長期間にわたって使用する際に価値が減少する資産のことを指します。具体的な例としては、建物、機械設備、車両、パソコン、ソフトウエアなどがあります。

これらの資産は通常、耐用年数が1年以上であり、一定の価値以上のものが減価償却資産に該当します。耐用年数とは、資産が完全に価値を失うまでの期間を表します。企業は税法や会計基準に基づいて、それぞれの資産の耐用年数を設定しています。

一方、土地などは時間が経っても価値が変わらないため、減価償却の対象にはなりません。土地は通常、その価値が維持される限りで企業の資産として評価されます。

減価償却を行うメリットは何ですか?

まず、減価償却は企業の財務状況を正確に反映する上で重要です。資産は時間とともに価値が減少しますが、減価償却を行うことでその価値の減少を財務諸表に適切に反映することができます。加えて、減価償却によって資産の使用寿命や更新の必要性を把握しやすくなり、適切な投資計画や資産管理が可能です。

さらに、減価償却は税法上でもメリットがあります。減価償却費は経費として認められ、課税所得を減らす節税効果があります。

減価償却費の仕訳はどのように行いますか?

減価償却費の仕訳には「直接法」と「間接法」の2種類があります。

直接法では、固定資産から減価償却費を直接減らします。直接法の仕訳は以下の通りです。勘定科目が煩雑にならないため、個人事業主の場合は直接法を選択するケースが多いです。

借方貸方
減価償却費10,000機械10,000

一方、間接法では、「減価償却累計額」という勘定科目に減価償却費を計上します。間接法では、元の固定資産の価格が貸借対照表に残るため、一般的により広く使用されています。

借方貸方
減価償却費10,000減価償却累計額10,000

減価償却費を理解して、自社の財務状況を正しく把握しよう

減価償却費は、会社が保有する資産の価値を正しく理解する上で非常に重要な概念です。必要に応じて税理士らプロの力を借りつつ、自社にとって適切な方法での償却方法を模索しましょう。

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