ブロックチェーンでトレカ!?最新技術を使ったTCGの未来と今を分析

皆さんTCGに興味はありますか?

TCGはトレーディング・カード・ゲームの略称で、収集要素のあるカードを使った対戦型のアナログゲームです。

トレカと略されたりもしますね。

日本では遊戯王やマジック・ザ・ギャザリングなどが有名でしょう。

最近、トレカ界隈に面白い動きがあります。

ブロックチェーンを応用することで、トレカをウェブ上で扱えるようにしようというのです。

そこで今回はブロックチェーンの技術的な側面に焦点を当てながら、今後のトレカ事情を分析していきます。

未来のトレカはどのようなものなのでしょうか?

さっそくいってみましょう!

目次

ブロックチェーンを使ったトレカの技術

まずはブロックチェーンを使ったトレカのベースとなるブロックチェーンの技術を簡単に解説していきます。

なお、ブロックチェーンを使ったトレカのシステムとして、すでにブロックチェーン・トレカというものが存在します。

以下では混同を防ぐため、ブロックチェーンのトレカといった場合、一般的なブロックチェーンで実現可能なトレカのシステムを、ブロックチェーン・トレカといった場合、特定のシステム名を指すことにします。

ブロックチェーンとは

最初にブロックチェーンとは何か?をみていきましょう。

ブロックチェーンは2018年とてもホットな技術として注目を集めていました。

これは仮想通貨ビットコインを実現するための基盤として考え出された技術で、不特定多数の参加者がいるネットワーク上で価値を実現、担保する仕組み、ということができます。

ビットコインを例に考えてみると、ネットワーク上でビットコインは価値を実現し、担保されているからこそ、通貨として参加者に取り引きされているわけです。

このビットコインの通貨部分を別のものに差し替えることで、ネットワーク上でいろいろなものに価値をもたせることができるようになります。

そのようにして価値を持たされたネット上の資産をアセットとよびます。

次の節ではブロックチェーンのトレカとアセットの関係をみていきましょう。

アセットとは

前節でアセットとはブロックチェーンによってネット上で価値を持たされた資産であると説明しました。

これをトレカに当てはめると、これはカードそのものがアセットとなります。

ブロックチェーン以前のゲームでもデジタルなカードを集めるものは存在しました。

よくあるソーシャルゲームのガチャはまさにこの形式に当たります。

ですが、今までのガチャとアセットの根本的な違いは数の限定性にあります。

これまでのガチャは言ってしまえば単なるデジタルデータだったので、運営のさじ加減でいくらでも増やすことが可能でしたし、非合法な手段をつかえばユーザーサイドで増やすことも不可能ではありませんでした。

ですがアセットの場合、最初から全体の上限数が決められており、ユーザーサイドで複製を行うことはほぼ不可能です。

また、運営側もカードの上限を増やす場合、明示的に増加させることを宣言しなければいけません。

これは、アセットを現実のお金と比較しながら考えるとわかりやすいでしょう。

つまり、個人でお金の複製は絶対できませんし、お金の総量を増やす場合、政府が事前に明示する必要があるのです。

このような一見面倒な縛りが入ることで、ブロックチェーンのトレカアセットは現実のトレカと同じように数量限定性を持つことが可能になったのです。

カードゲームではアニメやマンガ、現実でさえ「世界に数枚しか存在しない幻のレアカード」というものがあります。

これをネット上のデジタルデータとして表現することが可能になったのです。

デジタルなトレカ業界に革命的なものが誕生したと言っても過言ではありません。

ブロックチェーン・トレカの特徴

この章では現実に運営されているブロックチェーンのトレカサービス、ブロックチェーン・トレカについてその特徴をみていきましょう。

プラットホームがmijin

ブロックチェーン・トレカで際立って珍しい部分として、ブロックチェーンのシステム部分にmijinを使っている点が挙げられます。

これまで多くのブロックチェーンの応用アプリがイーサリアムというプラットフォーム上で展開されていましたが、ブロックチェーン・トレカはmijinを選択したのです。

イーサリアムはスマートコントラクトという仕組みを早くから導入し、ブロックチェーン上でアプリケーションを作成可能であることを示したパイオニア的存在でした。

現在でも多くの先進的なプロジェクトがイーサリアム上で進行しています。

多くのノウハウが蓄積され、先行事例もあったはずのイーサリアムではなく、あえてmijinを選択したのはその特徴によります。

mijinの特徴1 プライベートブロックチェーン

mijinの特徴としてまず挙げられるのが、プライベートブロックチェーンである、ということです。

プライベートブロックチェーンとは、一般のブロックチェーンのように無制限にネットワークに参加でき、すべてのノードが平等になるのではなく、特定のノード群に特別な役割をもたせたり、ノードの参加を制限できるものです。

ブロックチェーンの基礎にあるP2Pネットワークの理念、開かれたネットワークに誰でも平等に参加できる、という部分を否定しているわけですね。

これにより耐障害性は低下しますが、代わりに次のメリットを得ることができます
・取り引きの承認者を減らすことができるため、決済速度が上昇する
・限られたノードしか計算に参入させないため、取引承認のマイニング報酬が不要
・参加者を限定できるため、プライベートな情報を扱うのに適している。

このようなメリットから、プライベートブロックチェーンはエンタープライズ向きともいわれています。

ブロックチェーン・トレカで考えますと、取引速度の上昇は何であれ歓迎すべき話でしょう。

特に最近のイーサリアムは参入者の増加により、計算速度、計算費用がともに大きくなってきています。

ゲームとしての快適性を重視するのであればプライベートブロックチェーンにするのは良い判断だったのではないでしょうか。

mijinの特徴2 NEMとの互換性

mijinの開発元は仮想通貨取引所のZaifを運営するテックビューロです。

このテックビューロの代表が朝山貴生氏で、この方はNEM財団の理事も兼任されています。

mijinのホームページの一番下にはNEMのバナーが貼ってあり、互いの関係が強いことを示しているようにもみえます。
URL:mijin | ブロックチェーン構築プラットフォーム

2016年にはテックビューロより、mijinとNEMの両方がカタパルトというコードネームの技術を共有する、という発表を行いました。

これにより、mijinとNEMはより近い技術で運用されることになり、互換性が高まったと言われています。

以上の特徴からブロックチェーン・トレカの未来は前途洋々たるものだったはずでした。

はずだったのですが……

テックビューロ倒産

2018年9月14日、テックビューロは運営する仮想通貨取引所のZaifから70億円相当の仮想通貨が流出する事件が起こりました。

実はそれ以前からZaifではシステム障害などが続き、信頼回復に躍起になっていた中での出来事でした。

結局、テックビューロは解散、Zaifはフィスコ仮想通貨取引所に事業譲渡されることになり、mijinの今後は2018年11月現在依然不透明なままです。

そのため、mijinのシステムに乗っかっていたブロックチェーン・トレカも現在販売を中止。

既に販売された分の取引だけは行える状態です。

こんなことでカードが激レア化するとは……

ブロックチェーンでトレカを扱う将来性

ここまでみてきた通り、ブロックチェーン・トレカは外部的な要因で現在流通できない状態になってしまいました。

ですが、ブロックチェーンとトレカという組み合わせ自体は非常に自然で相性がいいものであるのも事実です。

そこで、この章ではこれからのブロックチェーンとトレカの将来性を検証していきたいと思います。

コレクションアイテムとして

ブロックチェーンにアセットを用意する最大の恩恵は、ネットワークが存続する限り所有が永久に保証される、という点です。

たとえば、実体のあるトレカの場合、紛失や盗難、火事や天災、その他いろいろな要因でカードそのものの価値が失われてしまう危険性が常にあります。

ですが、デジタルデータであるアセットではそれがありません。

ネットワークが存続する限り、という条件が必要なため、ブロックチェーン・トレカのようにネットワークそのものがダメになるケースではどうしようもありませんが……

それでも、実体のあるカードよりは価値の消失が起こりにくいといえるのではないでしょうか。

たしかに、実体のあるカードの方が所有欲が満たされる、という側面もあるため、万能な方法ではありません。

ですが、トレカに限らず、コレクション性の高いデジタルデータをブロックチェーン上で限定的に生産する、という方法はこれからメジャーになっていくのではないでしょうか。

ゲームとして

もう一つの可能性が、トレカを遊ぶためのベース部分をデジタルな形で提供できるのではないか、という点です。

TCG経験者ならわかるかとおもいますが、はじめて対戦をしようと思ってマニュアルをみた時、よくわからない文章が山のように書いてあることにうんざりした経験はありませんか?

特定のゲームを例にするのも失礼かもしれませんが、マジック・ザ・ギャザリングはそのルールブックの難解さからマジック語なるスラングができるほどに、ルールとその日本語が複雑怪奇でした。

たとえば、こんな感じです。

500.2. プレイヤーが優先権を得るフェイズやステップは、スタックが空で、かつ全てのプレイヤーが続けてパスしたときに終了する。スタックが空になったことでフェイズやステップが終わるわけではない。スタックが空の状態で、全てのプレイヤーが続けてパスしなければならない。従って、それぞれのプレイヤーには、そのフェイズやステップが終了する前に、新しい物をスタックに積む機会がある。

引用:マジック総合ルール(和訳 20181005.0 版)

これでも昔に比べればかなりわかりやすくはなっているんですけどね。

ルールを正確にしようとすればするほど、文章は込み入っていきルールは長大になっていきます。

こういったルールの面倒臭さがTCGの参入障壁となっているのは事実でしょう。

ですが、正確にルールを処理する機構があればどうでしょうか。

細かいルールや点数計算、特殊カードの処理、そういったルールを処理するのに最適な仕組みがブロックチェーンには備わっています。

そう、スマートコントラクトです。

スマートコントラクトをつかってゲームの煩雑な部分を処理できれば、かなりゲームがプレイしやすくなり参入障壁も低くなると思うのです。

ただ、これ要はデジタルゲームとしてTCGを遊んでいるのとほとんど変わらなくなってしまいますが……

ただ、一般的なデジタルゲームと異なり、カードの総数に上限を設けることもできますし、レアなカードをアセットとして取引する、という楽しみもあります。

現在このような構想のブロックチェーンTCG、Gods Unchainedが製作中です。

公式サイトはこちら
URL:Gods Unchained

Gods Unchainedは最近流行りのe-スポーツとして展開させていくようですね。

優勝賞金の目標額が160万ドルとなかなかバブリーな魅力もあります。

ただ、最近のブロックチェーンブームと投機的な資金の流れからか、公式サイトの各所からお金お金した雰囲気を感じるのが複雑な気分ではあります。

もっと純粋にカードゲームのベースとして、ブロックチェーンが活用される将来が来てくれるといいなと、元TCGプレイヤーとしては感じています。

まとめ

いかがでしたか?

今回はブロックチェーンをトレカに応用する、ということで、基礎、ブロックチェーン・トレカについて、技術の将来性とみてきました。

ブロックチェーン自体が最近になって急に盛り上がってきたということもあり、応用分野もまだまだ手探り、混沌とした状態なのが印象深いですね。

ただ、ブロックチェーン自体は技術として革新的なものであり、これからの発展が大いに期待されるものでもあります。

お金お金した分野だけでなく、こういった趣味の世界でも、技術によって新しい世界が拓けるならばとても面白いですよね。

今後の展開に注目したいジャンルです。

この記事が皆様のブロックチェーンへの理解の一助となれば幸いです。

この記事を書いた人

フリーのエンジニア・ライター。
プログラミング、ライティング、マーケティングなど、あらゆる手段を駆使して、
ハッピーなフルリモートワーカーを目指し中。

最近興味がある分野は深層強化学習。
積みゲー、積ん読がどんどん増加しているのがここ数年の悩み。
実は侍エンジニア塾の卒業生だったりします。

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