皆さんブロックチェーンに興味はありますか?
ブロックチェーンの解説を読んでいると
「インターネットの登場以降、最大の発明」とか、
「ブロックチェーンによって世界は大きく変わるだろう」とか、
ずいぶんと大きなことを言っているのをみかけるかと思います。
でも、実際のところ何がそんなにすごいのか、概念だけではよくわかりませんよね。
そこで今回は、最近話題のブロックチェーンについて、具体的な応用事例からそのポテンシャルを見ていこうと思います。
ブロックチェーンはどんな未来をもたらすのでしょうか?
さっそくいってみましょう!
ブロックチェーンの応用とは?
具体的な例に入っていく前に、基本を確認しておきます。
ブロックチェーンについて、技術部分の基礎はこちらの記事にまとめました。

応用を考えるにあたって理解しておくべきブロックチェーンの基礎は次の点です。
・ブロックチェーンはトランザクションが基本的に改ざん不能である
・ブロックチェーンはP2Pを使ったネットワークである
・スマートコントラクトにより高い信頼性と透明性のある取引が実現できる
専門用語が大量に出てきましたね。
ひとつひとつ解説していきます。
トランザクション
トランザクションとはブロックチェーンが保持するデータのことです。
データと言われてもピンとこないでしょうから、ビットコインを例に見てみましょう。
仮想通貨のビットコインはブロックチェーン応用の1例です。
ビットコインにおけるトランザクションとは取引記録になります。
ビットコインは取引記録を参加者全員が保持・相互に検証しています。
さらに、トランザクションは全員による監視以外にもハッシュ値を使った改ざん防止策や電子署名による偽造防止策など、二重三重に改ざんに対する防御を行っています。
トランザクションの耐改ざん性はビットコインの信頼性の根幹をなす部分です。
このような徹底した改ざん対策によってビットコインは通貨としての信用を獲得しているわけですね。
この取引記録をより抽象的なデータに拡張したものがトランザクションです。
以上からブロックチェーンのトランザクションは基本的に改ざん不能であり信用に値する、となるわけです。
トランザクションに何を格納するかでブロックチェーンの応用方法が変わってきます。
実際にどんなものが格納されているのかは次章以降でみていきましょう。
P2Pネットワーク
P2Pネットワークは参加者全員が平等な点(ノード)として扱われるネットワークです。
これの対極にあるのがサーバーが中心にあるクライアント・サーバネットワーク、中央集権型ネットワークとも、スターモデルとも呼ばれるものです。
P2Pネットワークの特徴は次のものが挙げられます。
・中央がないため、障害に強い・参加者が増えるほど全体の計算能力が上がる
・拡散した情報のコントロールが難しい
これらの特徴を活かすことでブロックチェーンを使ったサービスは高耐久・高信頼性を獲得することが多いですね。
スマートコントラクト
スマートコントラクトとは、「契約の自動化」とよばれる技術です。
上のP2Pにも関わることですが、ブロックチェーンを使ったサービスでは中央がないため、契約を結ぶには事前にルールを設定し、自動で行われるようにしなければなりません。
少し専門的に言うと、契約のプロトコルを事前に定義しておかなければいけません。
裏を返せば、ブロックチェーン上で行われる契約はすべてそのプロトコルに従うため、非常に透明性の高いものになります。
また、契約の期間短縮や不正防止、仲介者をへらすことによるコスト削減にも寄与することになります。
少々難しい感じを受けるかもしれませんが、たとえとして、いままでお店で売っていたジュースを自動販売機におきかえることを想像してみてください。
これはジュースを買う、という契約が自販機というプロトコルによって自動化されているわけです。
これにより、買う時間の短縮、店員さんの不正防止、店を構えなてもいいことによるコスト削減などが付随することはイメージできるのではないでしょうか。
どのようなスマートコントラクトを組むかが、ブロックチェーンサービスの肝ともいえるでしょう。
ブロックチェーンの応用が期待されている分野
それでは実際にブロックチェーンの応用が期待されている分野の実例をみていきましょう。
最後にブロックチェーン2.0と3.0についても取り上げます。
不動産取引
まず最初に挙げられるのが不動産取引についてです。
従来の不動産取引は高額な手数料や取引にかかる時間、仲介業者の不正など、様々な問題を抱えるものでした。
これらの問題は、先に説明したスマートコントラクトおよびブロックチェーンを使うことで一気に解決が図れる問題でもあります。
この取り組みはすでにアメリカで始まっており、仮想通貨REXとして市場でやり取りもされています。
URL:imbrex
不動産取引革命の先駆けとなるのか、注目が集まっています。
物流システム
次に紹介するのが物流システムです。
こちらはトランザクションの改ざん耐性をいかして、配送するものの来歴を記録させたり、宅配業者によらない宅配ボックスと利用者を紐付ける利用法が検討されています。
配送の来歴記録については、現在アメリカのウォルマートが食品を農場から店舗までほぼリアルタイムに追跡できる技術として構築中とのこと。
また、宅配ボックスと利用者の紐付けに関してはファッションビルのパルコが実証実験を行っています。
食品の産地偽装や商品の誤配送が過去の遺物になる時代は果たしてくるのでしょうか。
アートの管理
アートと最新技術というとなんだか不思議な取り合わせな気もしますが、こちらも非常に注目を集めているジャンルです。
ここではトランザクションの改ざん耐性をいかして、アート作品のデータや取引記録を永遠に残す仕組みとしてブロックチェーンを活用しています。
たとえば、アート作品をデジタル化して、制作年月日とともにブロックチェーンに記録すれば、著作権の管理にも使えます。
また、すでにあるサービスとしてVerisartがあります。
こちらは、美術品の取引をブロックチェーンに記録することで、今取引しようとしているものが贋作なのかどうか判断できるシステムです。
アート作品以外にもダイヤモンドなどの非常に高価なものの取引にもブロックチェーンが導入されようとしています。
個人の証明
自分が自分であることを他人に証明する。
簡単なようでいて、意外と根が深く難しい問題です。
現状、公的に証明するためには国などの権威あるところから発行されたものでなければ効力がありません。(免許証やパスポートなど)
ですが、ブロックチェーンを使うことで国に頼らずとも自分を証明できるようになるかもしれません。
こちらも基礎になっているのはブロックチェーンのトランザクションの改ざん耐性。
一度記録されれば容易に改ざんされないデータを活用することで、個人の情報を蓄積し、質問と組み合わせることで個人を識別しよう、という試みがあります。
個人が識別されることでオフィスの入館手続きやクレジットカードの認証、さらに、政府や役所の手続きまで可能になっていきます。
これを推し進めた先が、あらゆる行政サービスがネット上で受けることのできる電子政府。
今の日本からみたら遠い未来の話のようですが、じつはすでに実現している国があるのです。
最終章でそちらにも触れたいと思います。
エネルギー産業
ブロックチェーンはエネルギー産業にも革命をもたらす可能性があります。
今までの電力供給では、コンセントに送られてくる電気はどのようにして作られたものなのか、知る方法はありませんでした。
ですが、各発電事業者が発電した量をブロックチェーンに記録し、それを仮想通貨のように取引できれば、例えば再生可能エネルギーのみの電気を選んで使うことが可能になります。
このように「顔の見えるでんき」をコンセプトにブロックチェーンをエネルギー産業に応用しようとしているのが日本の電力会社、みんな電気です。
今までだとユーザーサイドからは使う電気を選ぶことがほとんどできませんでしたが、このシステムにより、より選択的に再生可能エネルギーを利用・応援することができるようになります。
電気というとどうしても価格競争に陥ってしまいがちですが、この方法で再生可能エネルギーの発電業者が選ばれるようになれば、再生可能エネルギーの利用が一気に進むことも期待されています。
ブロックチェーン2.0と3.0
ブロックチェーンはビットコインで通貨に革命を起こしました。(というか現在進行系で起こしつつあります)
それに続くブロックチェーンの革命をブロックチェーン2.0および3.0とよび、各界から注目が集まっています。
ブロックチェーン2.0&3.0の中心となるのがスマートコントラクト。
スマートコントラクトを使うことで、取引・契約・権利をネット上で流通させよう、というのがブロックチェーン2.0&3.0の中心的な考え方です。
ブロックチェーン2.0と3.0の違いは2.0が通貨以外の金融分野にブロックチェーンを適用すること。
3.0は非金融分野にブロックチェーンを適用することをいいます。
ただ、最近はそれぞれの分野にどのようにブロックチェーンを適用するかが重要になってきているため、2.0なのか3.0なのかという区分はあまり言われなくなってきたように感じます。
Web2.0といい、こういった表現は瞬間的に流行るのですが、すぐ廃れる印象がありますね。
実際に使われている例:ブロックチェーン先進2カ国を紹介
さて、ここまでいろいろなブロックチェーンの応用事例を紹介してきましたが、多くは未来にこんな可能性がある、という将来予想のレベルが多かったかと思います。
そのため、あまり実感が持てない方も多いかもしれません。
ですが、ブロックチェーンによる革命は着実に進んでおり、すでに実際に運営・活用している国が存在するのです。
最終章ではすでに国家の中枢レベルでブロックチェーンを活用している2つの国、エストニアとスイスのツーク市を紹介します。
北欧のIT立国:エストニア
エストニアというと、皆さんはどんなイメージを持つでしょうか?
世界史に詳しい方でしたら、バルト三国の一員で、ロシア革命後に独立するも、ナチスドイツやソ連の占領を経て1991年に独立した北欧の国、といったことはご存知かもしれません。
また、ITに詳しい方でしたらこの国がインターネット電話サービス「Skype」の生まれ故郷であることもご存知でしょうか。
そう、エストニアは度重なる占領からIT技術により経済を立て直し、国家戦略の中心にIT技術を据えた、IT国家なのです。
先に紹介した電子政府も当然のように導入されており、各種行政サービスがインターネット上で受けることのできる仕組みも1990年代後半から構築され始めたと言われています。
利便性の高い電子政府の仕組みですが、問題点もあります。
そのひとつがサイバー攻撃により、国民のかなり重要度の高い個人情報が漏洩する危険性があること。
これが現実に起こりかけたのが2007年の大規模サイバー攻撃でした。
この攻撃は結局大事には至らなかったものの、この事件から必要とされたのが、分散型で、透明性が高く、堅牢なデータベースの構築でした。
そのような経緯で2008年に開発されたのがKSIシステム。
またの名をKSIブロックチェーンといいます。
ここでブロックチェーンに詳しい方でしたら1つ疑問符が湧くことでしょう。
世界で最初にブロックチェーンという単語を用いたのはサトシ ナカモトの論文で、この論文は2009年にネットに公開されたはずだと。
まさにそのとおりで、エストニアが開発したKSIシステムはサトシ ナカモト論文を参照して制作されたものではありません。
必要な機能を組み上げていった結果、ブロックチェーンとほぼ同等のものが構築された、というのが現実のようです。
さらにKSIシステムにはブロックチェーンと異なりトランザクションに依存しないスケーラビリティを持ち、独自の数学に裏打ちされたセキュリティーも搭載していると言われています。
世界に与えた衝撃で言えばブロックチェーンが大きかったわけですが、できた順序で言えばKSIシステムの方が先輩にあたるんですね。
KSIシステムは2012年から本格的な運用が開始され、今日もエストニアの電子政府システムの中核として働いています。
暗号の谷の住人たち:スイス・ツーク市
スイスというと上の写真のように雄大な自然を軸にした観光、時計に代表される精密機械、スイス銀行でお馴染みの金融あたりがすぐに浮かぶイメージでしょうか。
そんなスイスの一都市、ツーク市がいまクリプトバレーと呼ばれ、世界中の注目を集めています。
クリプトバレーを訳すと暗号の谷。
ツーク市は暗号通貨、ブロックチェーンの関連企業が世界中から集結している街なのです。
スイスは仮想通貨やブロックチェーンを国際金融の戦略的改革と位置づけ、産業の発展を維持する方針を打ち出しています。
具体的には圧倒的に低い税率により、世界中から関連企業を誘致しようとしているわけですね。
2018年現在、ブロックチェーン関連企業は人口3万人程度の街に600社以上存在するといわれています。
当然、ブロックチェーンの導入にも積極的で、2017年11月15日にはブロックチェーン上で最初のデジタルIDによる住民登録が行われました。
2018年にはいっても、法的効力を持たない投票にブロックチェーンが実験的に利用されるなど、様々な投票や住民登録などの行政サービスに対するブロックチェーンベースのデジタル化が加速することが予想されています。
まとめ
いかがでしたか?
今回はブロックチェーンの具体的な応用事例として、いくつかの可能性と実際に運用されているシステムを紹介してきました。
ブロックチェーンは最先端の技術のため、多くの可能性を秘めています。
それと同時に能力以上の夢物語が語られてしまっている現状も否定できません。
この記事でブロックチェーンの地に足の着いた応用事例を確認でき、技術の可能性を感じることができたのなら幸いです。